SVOD動画でも"視聴ジャーニー"は視聴体験満足度を高めるのか? 〜映像視聴の生活者研究シリーズ〜

- この記事はこんな方にオススメ!
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- 映像コンテンツ視聴促進のための施策を検討している方
- 視聴者がどのように映像コンテンツを選び、楽しんでいるか興味がある方
要旨
SVOD動画における視聴体験満足度と視聴ジャーニーの関係を分析。視聴前・中・後の行動が多いほど視聴体験満足度が高まり、継続視聴意向やメディア期待感にも有意な正の影響があるという、テレビ番組の視聴ジャーニーと同様の結果が確認できた。
有料定額制動画配信サービス(SVOD動画)の視聴ジャーニーを探る
ひと研究所では、テレビ番組などの映像コンテンツの「視聴前」「視聴中」「視聴後」で起きる行動やリアクションである<視聴ジャーニー>が、コンテンツの"視聴体験満足度"を高めるという視点で、生活者研究を進めています(図1)。今回は、SVOD動画における視聴ジャーニーと視聴体験満足度の関係について分析した結果をご紹介します。
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SVOD動画でも視聴"体験"満足が重要
ひと研究所では、2025年1月に、有料定額制の動画配信サービス(以下「SVOD動画」と記載)に焦点を当てた「動画視聴ジャーニー調査」を実施しました。このデータを用いて、ひと研究所が映像コンテンツにおいて重要な指標であると考えている「視聴体験満足度」について検証を行いました。
視聴体験満足度とは、番組やコンテンツについて、内容に加えてその視聴前後の体験や行動、気持ちも含めてどの程度満足したのかを示す指標です。テレビ番組についての視聴ジャーニーの研究調査の分析において、番組の内容満足度よりも継続視聴やメディア評価への影響が大きいことが確認されています。
まず、SVOD動画の視聴体験満足度(5段階の回答データ)を説明変数とし、継続視聴意向やメディア期待感など下記の9項目を目的変数として回帰分析を実施しました。
目的変数:継続視聴意向やメディア期待感など9項目(それぞれ5段階の回答データ)
● この番組・コンテンツを今後も視聴したいと思った
● この番組・コンテンツをマイリストに入れる・保存しておきたいと思った
● この番組・コンテンツを他の人と話題にしたいと思った
● この番組・コンテンツを他の人に勧めたいと思った
● 配信番組・コンテンツ全般に期待感を持った
● 配信番組・コンテンツ全般に対して好印象になった
● 配信番組・コンテンツは良いものだ、と思った
● 配信番組・コンテンツの質の高さを見直した
● 配信サービスや配信番組・コンテンツは必要だと思った
分析の結果、9項目いずれに対しても、視聴体験満足度が統計的に有意な正の効果があることが確認されました(図2)。すなわち、テレビ番組の時と同様に、SVOD動画においても、視聴体験満足度のスコアが高いほど、継続視聴意向やメディア期待感は高まる効果があるということです。
さらに、コンテンツの内容に関する「満足度」ではなく、視聴ジャーニーも含めた視聴体験の「満足度」が重要であることを検証するために、図2と同様の分析を「内容満足度」でも実施し、各回帰分析結果の説明力の比較を行いました(図3)。
ここでは、目的変数に対する説明変数の説明力を表した指標である「決定係数」を比較しています。スコアが大きい方が、継続視聴意向やメディア期待感などのそれぞれの項目への説明力が大きく、より有効な指標であると考えられます。
結果をみると、すべての項目において、「内容満足度」よりも「視聴体験満足度」の決定係数が高い結果となっています。つまり、継続視聴意向やメディア期待感の上昇という観点からみた場合、番組・コンテンツを評価する指標としては「視聴体験満足度」がより重要であることを意味しており、テレビ番組の視聴ジャーニーの分析結果と同様の結果が得られました。
視聴ジャーニーがSVOD動画の視聴体験満足度を高めるのか
次に、この「視聴体験満足度」と視聴ジャーニーの関係を確認していきます。図4は、視聴体験満足度("非常に満足した"の回答率)と、視聴ジャーニーの行動・リアクションの出現個数との関係を表しています。視聴前、視聴中、視聴後、いずれを見ても、個数が増加するに従い視聴体験満足度も上昇していることが分かります。つまり、SVOD動画においても、視聴ジャーニーの行動・リアクションが活発に起きるほど視聴体験満足度が高まることが分かります。
また、今回の動画視聴ジャーニー調査において、調査した個別の行動・リアクション別の視聴体験満足度のスコアと上昇値(リフト値)の一覧が図5です。行動・リアクションごとに視聴体験満足度の高まり方には差がありますが、ほとんどの項目で、視聴体験満足度が高まっていることが確認できます。SVOD動画においても、視聴ジャーニーを活性化することが、コンテンツを盛り上げ視聴者に楽しんでもらうためには重要であることがよくわかる結果と言えます。
このように、SVOD動画でもテレビ番組と同様に、継続視聴意向やメディア評価を高めるために視聴体験満足度が重要な意味を持つ指標となること、視聴ジャーニーの活性化が視聴体験満足度を高めることにつながることが確認できました。今後は、SVOD動画だけでなく見逃し配信なども含めて、広く映像コンテンツに関する<視聴ジャーニー>の研究を進める必要があると考えています。今後の研究にぜひご注目ください。
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【調査データ概要】
ひと研究所 「動画視聴ジャーニー調査」
調査方法:インターネット調査
調査対象:日本全国の15~69歳(中学生は除く) かつ 2024年に視聴した有料定額制の動画配信サービスの番組・コンテンツの中で印象に残るものがある。
サンプル数: 2851サンプル
調査期間: 2025年1月24日(金)~1月28日(火)