動画プラットフォームごとに利用者はどう違う?SoDAデータで特徴を分析
- この記事はこんな方にオススメ!
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- 放送局などコンテンツホルダーの配信担当者の方
- SVODにおけるコンテンツの利用状況を知りたい方
SVOD利用率は右肩上がり、コンテンツ配信戦略が視聴行動に影響する
有料定額制の動画配信サービス(以下:SVOD)は、ここ数年で急速に普及し、今や生活者の日常に根付いたサービスになっています。SVOD利用率の推移(図1)をみると、2020年には36%だった利用率が、2025年には61%にまで達しています。
オリジナル作品の配信や独占配信、特定ジャンルへの特化、他サービスとの連携など、各動画サービスでは多様な戦略がとられています。それが、生活者のニーズをとらえ、SVOD利用者の増加につながっていると考えられます。こうしたプラットフォーム特性の違いは、SVOD利用者の利用目的や視聴行動にも影響を与えていることが想定されます。
本記事では、SVODの利用状況をログベースで測定し、エピソード(各話)単位で可視化・分析できるサービス「SoDA」のデータをもとに、SVODの中でも代表的なサービス2つに注目して、それぞれの視聴行動・利用者像を紐解いていきます。
動画プラットフォームサービスごとに利用者像は異なる
今回注目する2つの動画プラットフォームサービスについては具体名を伏せさせていただきますが、ここではサービスXとサービスYと表記します。
まず、サービスXとサービスYの利用状況を、SoDAデータから総視聴人数・総視聴回数・総視聴分数の3つの指標でみていきます。(図2)は、3カ月間のサービスごとの総視聴人数と重複者数、総視聴回数、総視聴分数を図示したものです。
総視聴人数は、サービスXが1,069万人、サービスYが1,157万人で、今回の計測期間ではサービスYの方が多くの方に視聴されています。利用者の重複率をみると、サービスX利用者の36%がサービスYも利用し、逆にサービスY利用者からみると33%がサービスXを利用しています。互いに3分の1程度の人が重複利用をしているという状況です。そして、いずれかのサービス利用者(1,844万人)のうち、両サービスを併用している人は21%となっています。両サービス併用者は確かにいますが、限定的であることがわかります。
また、視聴回数と視聴分数は、サービスXが視聴回数22億回・視聴分数約730億分、サービスYが視聴回数9億回・視聴分数が約300億分となっています。
それぞれのサービス利用者がほぼ同じ人数であることから、単純に視聴回数と視聴分数を比較しても、サービスX利用者は、動画コンテンツを習慣的に視聴する人が多いことがうかがえます。
なお補足として、サービスXとサービスYの利用者の性年齢構成についても確認しておきます。
(※両サービスの性年代構成を示した(図3)はSoDAではなくACR/exのデータになります。データソースが異なるためご注意ください)
両サービスの性年代構成を比較すると、サービスX利用者は男女20~34才及び女性50~69才の構成比が多く、サービスY利用者は男性35~49才・男性50~69才の構成比が多くなっています。
この性年代構成の違いも、先ほどの動画コンテンツの視聴習慣の違いに影響していると考えられます。また、データソースは異なるものの(図2)で紹介したSoDAのデータでは利用者の重複率がお互いの3分の1程度であることを踏まえると、両サービスの利用者像がやや異なる傾向にあることがわかります。サービスXとサービスYの主な利用者は"別の人たち"と考えた方が良いといえます。
動画視聴の熱量差により視聴行動は異なる
次に、サービスXとサービスYにおける視聴行動の違いを具体的にみていきます。今回は、シリーズ作品の話数別視聴人数の推移に注目したいと思います。
2025年1月クールのテレビ放送に伴い両方のサービスでそれぞれ配信された人気アニメシリーズ3作品を対象に、各話の視聴者数の指数(全話平均を100とした場合の相対的な数値)の推移を比較した結果が(図4)です。
左側の緑色のグラフがサービスX、右側のオレンジ色のグラフがサービスYで、実際の各話の視聴人数指数が実線です。点線は、1話を除いて、2話から最終話の視聴人数に対して引いた近似直線※です。実線と重なっている部分は平均的な傾向と一致していることを示します。サービスXの実線は、話数が進むにつれて一定の割合で減衰しています。さらに、減少幅のズレが小さいため、平均的な傾向を示す点線とほぼ重なる、または近い結果になるケースが多く見られます。これらのことから、推移は安定していることがわかります。一方、サービスYは全作品で初回の視聴人数指数(実線)が近似直線(点線)よりも突出して多くなっています。つまり、サービスYは、サービスXよりも第1話だけ見る人が多い傾向にあるということになります。この理由は様々考えられますが、気になる作品を"おためし"として第1話を視聴している様子が想像できる結果といえます。
※近似直線:複数のデータにできるだけ近づくようにひかれた一本の直線。散らばったデータ全体の大まかな傾向を把握する際に使われる。
ここまでの比較結果からサービスXとサービスYの利用者像の違いを整理します。
まず、両サービスの総視聴人数を比較すると、サービスYが90万人程度多い結果となりました。次に、性年代構成をみると、サービスX利用者は男女20~34才及び女性50~69才の構成比が多く、サービスY利用者は男性35~49才・男性50~69才が多く、性年代構成に違いがみられました。
また、総視聴回数・総視聴分数はサービスXがサービスYより多く、サービスX利用者は動画コンテンツを習慣的に視聴する人であることがわかりました。
逆に、サービスY利用者は、動画視聴ライト層にあたります。流行作品のチェックなど自分に合う作品を探すために、まずは第1話をおためし視聴として見にきていることが考えられます。
このように、SoDAデータを分析することで、SVOD利用者像の違いや視聴行動の実態をうかがい知ることができます。ひと研究所では、今後も広く動画コンテンツに関する研究を進める必要があると考えており、SoDAのデータも活用していきたいと考えています。今後の研究にぜひご注目ください。
【本記事で紹介したサービス】
・サービス名:「SoDA」(SoDAはDigital i社との協業によりビデオリサーチグループにて代理販売)
・集計期間:2025年1月1日~2025年3月31日
・対象国:日本
・対象デバイス:テレビ・スマートフォン・PCなど
・サービス名:ビデオリサーチ「ACR/ex」
・調査時期:2020年~2025年(各年4-6月)
・対象地区:7地区計(札幌・仙台・東京50km圏・名古屋・関西・広島・北部九州)
・ターゲット:男女12~69歳
