てれびのスキマの温故知新〜テレビの偉人たちに学ぶ〜「佐々木守」篇

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てれびのスキマの温故知新〜テレビの偉人たちに学ぶ〜「佐々木守」篇

てれびのスキマの温故知新~テレビの偉人たちに学ぶ~ 第53回



佐々木守といえば、実相寺昭雄監督と組んだ『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』の脚本家として記憶している人が多いだろう。

もともとは地球人だった宇宙飛行士・ジャミラの悲劇を描いた「故郷は地球」や、放射能で汚染されたスペル星人を描き、欠番扱いとなっている「遊星より愛をこめて」など、後世に語り継がれる傑作・問題作を生み出している。

実相寺昭雄は彼を「発想は奇抜、でも、構成は骨太。理想的な脚本家だった」と評している(※1)。

石川県の農村・能美市に生まれ、戦後数多く創刊された子供向け雑誌で冒険小説を愛読した佐々木は、新聞や文集作りに熱中した。上京し大学に進学すると、児童文学を志し、研究誌「小さい仲間」の同人となった。そこで作家らと知り合ったのが縁で、まずはラジオ作家としてキャリアをスタートさせた。

佐々木守が何よりも凄いのは、手掛けた作品の幅広さだ。

前述の特撮作品では他に『怪奇大作戦』や『シルバー仮面』、『アイアンキング』があり、『柔道一直線』や『君たちは魚だ』といったスポ根ドラマ、『おくさまは18歳』のようなコメディ、『七人の刑事』、『刑事くん』などの刑事ドラマ、そして「赤いシリーズ」......と驚くほど多種多様。

さらには『笑って!笑って!!60分』(TBS)や『みごろ!たべごろ!笑いごろ!』(現・テレビ朝日)といったバラエティ番組にも参加していた。

そんな中でもとりわけ異色だった作品が、ホームドラマ『お荷物小荷物』(TBS)だ。

このドラマの最大の特徴は、「脱ドラマ」と呼ばれた手法を用いたことだ。

主演は、『ひょっこりひょうたん島』(NHK)の博士役などで知られ、当時マルチタレントとして人気を博していた中山千夏。

彼女がプロデューサーや共演者にインタビューを始めたり、セリフの言い間違い、つまりNGシーンもそのまま中断することなく撮り続けやり直したり、さらには役者本人の言葉を喋りだすこともあったという。

こうした「脱ドラマ」の手法はなにも奇をてらったものではなく、佐々木守のテレビ論が根底にあると、中山千夏は自著『芸能人の帽子』で佐々木自身の言葉を引用しながら解説している。

「佐々木は〔テレビ番組というものは、決してそれが独立した作品として存在しえない〕と看破していた。『お荷物』を作るに際して〔ぼくたちは、一度も、脱「ドラマ」を作ろうと思ったことはなく、ただ一つの「テレビ番組」を作りたいと考えていただけ〕」(※2)だという。

佐々木の考える「テレビ」とは、「果てしのない時間の流れを、とにかく便宜的に区切った『番組』の総体」でしかない。つまりドラマであろうが、ニュース、バラエティ、音楽、スポーツ......、なにであろうが、それらは何の区別もない「番組」にすぎないのだ。

ならば、共演者はもとより、スタジオで働くスタッフも、そのスタジオ風景もドキュメントする。NGだって普通のことなのだからそのまま放送する。 そうやって、結果的に「脱ドラマ」と呼ばれるようになっていったのだ。

舞台は東京の下町にある滝沢運送店を営む男ばかりの7人家族。家長は忠太郎(志村喬)、その息子が孝太郎(桑山正一)、さらにその息子、つまり忠太郎の孫が5人いる。そこにお手伝いとして中山千夏演じる田の中菊がやってくるところからドラマは始まる。

この家族は徹底した男尊女卑の思想を持ち、家長の忠太郎は、日の丸と日本刀を振りかざす絶対的権力者。

しかし実際は、菊は姉の復讐を果たすために沖縄から一家にやってきたのだ。

その菊を一家の男たちは奴隷のように扱い、セクハラの限りをつくしている。

このように、ドラマの設定やストーリーに政治的メタファーがこめられているのも特徴だ。

最終回では、唐突に憲法第9条が廃止され徴兵制が復活したというニュースが飛び込んでくる。

そして、日本が戦争状態に。5人兄弟は兵士として戦地に送り込まれ、あっさり全員が死ぬ。

このドラマが放送されたのは、1970年10月17日から1971年2月13日まで。つまりは、60年代末に最高潮に達した学生運動が一気に収束していった時期。まだまだ"政治の季節"の匂いは色濃く残っていた。

特筆すべきは、この政治的かつ実験的すぎる内容にもかかわらず、カルト的人気にとどまることなく、最終回は過去最高(関東で29.2%、関西で36.2%)を記録。続編が作られるほど商業的にも成功したということだ。スタッフの間では、「3歳児から新左翼まで楽しめる番組」というジョークが流行するほどだったという。

さらに驚くべきことは、こうした実験的ドラマだけではなく、佐々木は一貫して自らの政治観を作品に注入していたということだ。

たとえば、1972年10月から放送された特撮ドラマ『アイアンキング』に登場する敵組織「独立幻野党」は過激派左翼を思わせるし、同じく敵組織の「不知火一族」も日本の先住民族の末裔たちだ。

佐々木は前者に対しては「僕は直接行動はできないけどさ、そういう人たちを自分のドラマに出して、気持ちはわかるよ」(※3)という思いがあったという。後者に関してはこのように語っている。

「不知火一族は、アイヌとか沖縄とかサンカとか、まあ日本の少数民族をイメージしたんだけど、僕は『お荷物小荷物』みたいなホームドラマでも、この問題やっちゃうんだけどね。北海道も沖縄も日本が侵略した土地だからアイヌや沖縄の人に返すべきだとかね」(※3)

強く共感したうえで、特撮ヒーロードラマとしては「敵役」に据えたのだ。

「たしかに逆なんだけれど、テレビじゃ反体制の側を主人公にはできないよ。そんな企画書いても通らないし。ただ、"不知火一族"にしても"独立幻野党"にしても、この日本に、国家体制に断固として逆らいつづける人たちがいっぱいいたほうがいいでしょう(笑)。断固として国家と戦う人々の姿を書きたかった。自己満足かもしれないけど、誰かがその気持ちをわかるだろう、ってね」(※3)

佐々木守は、一貫して「反体制」を貫き、戦い続ける人たちを描いていたのだ。

(参考文献)

(※1)「朝日新聞」2006年4月3日

(※2)中山千夏・著『芸能人の帽子 アナログTV時代のタレントと芸能記事』(講談社)

(※3)『夕焼けTV番長(洋泉社MOOK 映画秘宝)』(洋泉社)

<了>

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