テレビ画面で動画サービスを視聴する人のリアル①〜生活者と「映像コンテンツ」の"いま・これから" 第三回 〜

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#ACR/ex #テレビ #メディア利用動向 #動画配信 #消費者心理 #行動実態 #視聴実態
テレビ画面で動画サービスを視聴する人のリアル①〜生活者と「映像コンテンツ」の

第三回目は、動画サービスをテレビ画面で視聴する人たちの実態をテーマにお伝えします。

まとめ
・動画サービスを、テレビ画面で見ている人は、生活者の1割強。
・映像を楽しみたいコンテンツは、「テレビ画面」で視聴
・「スマホながら視聴」は日常化
・「可処分時間」を意識し、その中で満足度を最大化できるコンテンツを選ぶ
・だれかと一緒に見るコンテンツは、「気軽さ」が大事?!

第一回目で、動画サービスの利用が、生活者全体で7割を超え広く浸透していることをご紹介しました。動画サービスを視聴するデバイスとしては、スマートフォンやタブレットといったモバイルデバイスが主流ではありますが、最近のテレビはリモコン上に「YouTube」や「Netflix」といった動画サービスのボタンがあり、以前に比べてテレビ画面で動画サービスを手軽に視聴できる環境になってきています。

動画サービスの視聴実態〜生活者と「映像コンテンツ」の"いま・これから" 第一回〜
テレビ放送と動画サービスのイメージは違う?!〜生活者と「映像コンテンツ」の"いま・これから" 第二回〜

今回は、テレビ画面で動画サービスを視聴する人たちが、どのようにテレビ放送と動画サービスを視聴しているのかを目的に行った調査結果を紹介します。

調査では、自然な生活の中での映像(テレビ放送・動画サービス)視聴実態を把握することを重視し、自宅でのビデオ撮影による観察(ビデオエスノグラフィー)という手法を用いて実施しました。
また、撮影した映像を元に個別のインタビューも行いました。

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【ACR/ex】

テレビへのインターネット接続状況・テレビ画面での動画視聴状況

■テレビ画面で動画サービスを見る人は1割程度
「テレビやテレビ接続機器へのインターネット接続率」は、4年間で9.1ポイント上昇し3割を超えました。また、「テレビで動画共有サイトや動画配信サイトを利用する人」は、2018年で11.5%とテレビ番組を映す以外の用途で、テレビ画面の利用は徐々に増えてきています。

【図表1】「テレビやテレビ接続機器へのインターネット接続状況」および
「テレビ画面での動画サービスの視聴状況」(12-69歳男女全体)
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※「テレビ画面での動画サービス視聴」は2017年より調査開始。
(Data:ACR/ex 2015年4-6月データ〜2018年4-6月データ)

テレビ画面で動画サービスを視聴する人のリアル

今回、テレビ画面でテレビ放送だけでなく、動画サービスを視聴する習慣がある方に協力をいただき、自宅で映像(テレビ放送・動画サービス)を視聴する様子を2日分撮影いただき、後日インタビューを行いました。
※電通メディアイノベーションラボとの共同研究

第三回では、「30代女性Bさん」の事例をご紹介します。

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【Bさんの生活行動(2日間)】

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Bさんは、朝起きたらテレビをつけて、夜帰宅したらテレビをつける本人も認めるテレビっ子です。映像視聴時間は、平日は120分、休日は254分、2日間の合計は 374分でした。
そのうちテレビ放送の視聴時間は、7割(277分)を占めています。

そんなテレビっ子のBさんですが、動画をスマホでも視聴しており、通勤時だけでなく夜に家事をしながら音声(映像は無し)のみで、音楽やノウハウ・テクニック紹介動画などを楽しむといったYouTubeの利用も生活に定着していました。
ここからは、自宅内のテレビ画面で映像(テレビ放送や動画サービス)を視聴しているシーンに絞り、6つのシーンに分けて詳細をみていきます(上記①〜⑥)。噴出しコメントは、各シーンで「その映像コンテンツを選んだ理由」・「映像視聴時の行動」についてインタビューした内容になります。

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【Bさんの事例での気づき】

■視聴スタイルについて

映像を楽しみたいコンテンツは、「テレビ画面」で視聴

Bさんは、<動画サービス×視聴デバイス>の使い分けがはっきりしているのが特徴的でした。海外ドラマは、映像を楽しみたいことから<Amazonプライム×テレビ画面>で視聴し、
音声のみでも楽しめるミュージックビデオやノウハウ系の動画は、<YouTube×スマホ>で視聴していました。海外ドラマをテレビ画面で見たい理由としては、大きな画面で見られることに加え、好きな体勢でリラックスして楽しめることが大きなメリットのようです。スマホで見ていた時は、ペットボトルやティッシュの箱に立て掛けて固定し、背中を丸めた体勢での視聴を強いられてしまっていたそうです。動画サービス利用者の中でも、映画やドラマといった長尺コンテンツジャンルをよく見る人にとっては、「リラックスした体勢で視聴できること」は、どのデバイスで視聴するかを選ぶ際の重視点と言えるかもしれません。

「スマホながら視聴」は日常化している

映像視聴シーンのうち、【木曜7時台】を除いた全てのシーンでスマホを利用している様子が確認できました。平日の朝は、身支度などで忙しいため「スマホながら視聴」は見られないようです。各シーン別の「スマホながら視聴時間」の割合は下記になります。

映像視聴シーン①(日曜13時〜14時台):9.6%
映像視聴シーン②(日曜19時〜20時台):8.4%
映像視聴シーン③(日曜20時〜22時台):14.5%
映像視聴シーン④(木曜7時台):0%
映像視聴シーン⑤(木曜21時台):61.5%
映像視聴シーン⑥(木曜22時台):16.8%

視聴シーンを元にインタビューを行い、<スマホで何をしているのか>や<テレビとスマホへの意識の向け方>を確認したところ、Bさんは映像視聴時にスマホでLINEやメールのやりとりをすることが多く、意識のほとんどをスマホに向けているわけではないということがわかりました。
そのため、ストーリーをしっかり追わないといけないコンテンツを除いては、映像視聴にとって大きな影響(内容把握への支障)はないようです。

ただし、毎週楽しみにしているドラマを視聴している際には、テレビ画面に意識を向けるためCM中に利用していたスマホを番組本編に入ると置くという行動が見られました。
スマホとテレビ画面への意識の向け方は、常に一定ではなく、テレビ画面での映像コンテンツに対する興味度で、自在に配分を調整しているようです。

■コンテンツ選びについて

「可処分時間」を意識し、その中で満足度を最大化できるコンテンツを選びたい

ドラマ好きのBさんは、平日夜にドラマを見ることが多く、「テレビ放送のドラマ」と「Amazonプライムの海外ドラマ」のどちらを見るかの1つの基準は、可処分時間の長さでした。
仕事から帰宅して、可処分時間が2〜3時間ある場合には海外ドラマ(Amazonプライム)を一気見することが多いそうです。一方帰宅時間が遅い場合には、テレビ放送のドラマをリアルタイムで見ることが多く、前の週の放送を見ていない場合には直前に見逃し配信をスマホで見てから、続けて見ることもあるそうです。

動画サービスはコンテンツがストックされており、ドラマ等のシリーズモノは際限なく見ることができます。Bさんの場合は、次が気になってしまうから2〜3話まとめて視聴できる日に動画サービスを利用するようにしているとのことです。
この可処分時間に対する満足度の最大化(タイムパフォーマンス(以下タイパ))を意識したコンテンツ選びは、Bさんに限ったことではなく、日々時間に追われる現在の生活者全般に当てはまるのではないでしょうか。

Bさんとは別の対象者のインタビューの中でも
「昔は、CMを短縮して見るために録画をしていたが、最近はリアルタイムで見れる・見れないに関係なくバラエティは10本ほど常に録画しておき、リアルタイムで見たいものがない時に見る」という発言が得られ、可処分時間に対する満足度の最大化が、タイムシフト視聴のあり方を変化させたのではないかと思いました。

共視聴コンテンツは、「気軽さ」も大事?!

映像視聴シーン②のインタビューコメントにもあるように、誰かと過ごす場で流す映像選びにおいて、「気軽さ」も1つの重視点だと感じました。
「気軽さ」には2つの意味が含まれており、"選ばなくていいという気軽さ"と"使命感なく見れる気軽さ"です。映像コンテンツを見るために集まっている場合を除いては、何の映像を流すかをその場で一々考えたり、相談することはわざわざしたくないと思います。

また、相談して決めてしまうとそれはそれで「ちゃんと見ないといけない」という意識が働き、映像を見ることが優先されてしまいます。ですので、場の雰囲気を良くするために流す映像としては「気軽さ」も重視されると思います。

テレビ放送の番組が選ばれやすい理由は、「気軽さ」だけでなく、「共通の話題になりやすさ」もあると思います。ニュース番組では今起こっていることを取り上げていますし、情報バラエティでは今のトレンドなど会話に繋がりやすい内容が多いこともあり、意図せずなんとなく流して会話のネタとして使っているのではないでしょうか。
そういった意味で、テレビ放送の番組を流すことは、BGMとしてだけでなく、コミュニケーション活性化の環境装置という役割も果たしていると言えそうです。

次回は、「30代男性Aさん」の事例をご紹介します。
テレビ画面で動画サービスを視聴する人のリアル②〜生活者と「映像コンテンツ」の"いま・これから" 第四回〜

【調査概要】
■自宅でのビデオ撮影による観察(ビデオエスノグラフィー)およびデプスインタビュー
(電通メディアイノベーションラボとの共同研究)
調査方法:対象者の自宅にビデオカメラを設置いただき、テレビ画面での映像視聴の様子を2日分撮影いただき、後日その映像を見せながらインタビュー

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調査日時
[ケース①(Aさん)30代男性]
2018年10月20日・21日 :自宅内での撮影
2018年 11月5日:インタビュー実施
[ケース②(Bさん)30代女性]
2018年8月26日・30日 :自宅内での撮影
2018年 9月9日:インタビュー実施

調査対象者:テレビ画面でふだんから動画サービスを見ている人
〜対象者条件〜
・テレビ画面・スマホの両方でコンスタントに動画を視聴している人
・テレビ放送を全く見ない人を除く
・主要な動画サービスのいずれかを利用している(YouTube、Amazonプライムビデオ、AbemaTV等)
・SNSを高頻度でやっている(Instagram、Facebook、Twitter)

■ACR/ex
調査対象者:12〜69歳男女個人
調査エリア:東京50Km圏
目標サンプル数:4800人
調査方法:電子調査票による調査
対象者抽出方法:エリア・ランダム・サンプリング
調査時期:2015年/2016年/2017年/2018年 4〜6月調査

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