CMを通じてみえた、 キャッシュレスサービスのエリア差

大田 義之
テレビ事業局 テレビ調査部
大田 義之
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「○○ペイ」をはじめとする、いわゆるキャッシュレスサービスをこの一年程でよく見聞きするようになりました。テレビCMで見かける機会が増えた印象ですが、今回はそれを検証するため「テレビCM速報」データを使ってキャッシュレスサービスのCMが、全国でどれくらい出稿されていたのか調べてみました。そこからは、各サービスのマーケティング戦略の一端がみえてきました。

  記事の中でご紹介しているサービスはこちら テレビCM速報


キャッシュレスサービスの普及状況

皆さんは日ごろ、キャッシュレスサービスをどのくらい利用されているでしょうか。毎日使うという人もいれば、あまり使わない人、全く使わない人もいるでしょう。キャッシュレスと一口にいっても、そのサービス内容は様ざまです。毎日の通勤に必須アイテムである「Suica」や「PASMO」に代表される交通系電子マネー、「JCB」や「VISA」をはじめとしたクレジットにデビット、プリペイドを含んだカード決済サービス、そして最近普及し始めた「LINE Pay」や「PayPay」などQRコードを読み込むだけで決済が完了してしまうQRコード決済サービスがあり、キャッシュレスサービスも3種類に大別されます。電子マネーとクレジットカードに関しては身近に感じる人も多いかもしれませんが、QRコード決済を使ったことがあるという人はまだまだ少ないのではないでしょうか。
テレビCMの出稿量をみる前に、これらキャッシュレスサービスの利用者割合を確認します【図表1】。ICT総研の実施した調査の「キャッシュレス決済の利用状況」によると、少額決済時(1千円~3千円)のサービス利用割合は、クレジットカードが44.8%で最も高く、次いでカード型電子マネーの割合が18.7%です。一方で、スマホのQRコード決済は9.4%となっており、やはり他のキャッシュレスサービスと比較すると利用者は少ないという印象で、まだまだ普及の余地があるといえそうです。

【図表1】キャッシュレスサービスの利用状況(上位)
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さらに、「よく利用するモバイルQRコード決済サービス」【図表2】をみると、「LINE Pay」と「PayPay」の利用率がともに40%を超えており、両サービスが主力となっていることがわかります。「LINE Pay」は我々の日常生活にも欠かせないコミュニケーションツール・LINEアプリから利用できることも強みなのかもしれません。一方、「PayPay」はソフトバンクとYahooが共同で立ち上げたサービスで、100億円のキャッシュバックキャンペーンで話題となったため、名前を知っている人も多いのではないでしょうか。その両サービスに続くのが「楽天ペイ」(31.7%)と「d 払い」(16.1%)で、今後さらなるシェアの伸びが期待できそうです。その他の「メルペイ」「au PAY」「origami Pay」の利用率は10%前後で、まだ大きなボリュームにはなっていません。


【図表2】よく利用するモバイルQRコード決済サービス(上位)
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【図表1】【図表2】はICT総研調べ「2019年度モバイルキャッシュレス決済の市場動向調査」より(回答期間は2019年6月11日~6月17日)

サービスによって異なるエリアごとの出稿戦略

2018年は多くのQRコード決済サービスが誕生し、キャッシュレス元年とも言われ、その勢いは2019年も持続しています。今回は、キャッシュレスサービスの中でも、ICT総研の利用率で上位にあがったQRコード決済サービス(7サービス)にフォーカスしてCM出稿状況を確認していきます。ただし、「楽天ペイ」については、対象期間中(2018年7月~2019年6月末)のテレビCMの出稿はありませんでした。
【図表3】は、「楽天ペイ」を除く6サービスの出稿状況を地区別に比較したものです。サービスごとに出稿の仕方に違いがあることが確認できます。これらをいくつかのパターンに分類してみていきます。

【図表3】QRコード決済サービスCMのエリア別出稿量(2018年7月1日~2019年6月30日)
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1. 都市部は大量に、且つローカルにも出稿するパターン
「LINE Pay」や「PayPay」「au PAY」「d 払い」の場合、関東・関西などの主要な地区に集中的にCMを出稿しつつ、ローカル地区含め全国(27地区)で出稿しているパターンです。「LINE Pay」は全国の出稿量が約20万秒と6サービスの中で最も多く出稿されています。「PayPay」も「LINE Pay」には及びませんが、出稿量の多さからCMで見たことがある人は多いと推察されます。一方、「au PAY」「d払い」もメジャーなサービスともいえますが、全国の出稿量は、先の2社には及びません。特に、「d払い」は全国で5万秒に届かず、6サービス中2番目に少ない出稿となっています。
これらのサービスは関東や関西をはじめとしたマーケットの大きい地区に大量出稿することで、大都市の登録者を大幅に増やしつつ、地方の消費者も逃さぬような狙いが見てとれます。

2. エリアによってバラつきのあるパターン
次に「メルペイ」ですが、全国に出稿しているという点では先の4社と共通していながらも、都市部に大量出稿しているわけではなく、地区によって出稿量に違いが見てとれるパターンです。「メルペイ」はフリマアプリとして知名度の高いメルカリのサービスですが、出稿量の多さは「LINE Pay」に次ぐもので全国のほとんどの地区を網羅しています。中でも、北部九州地区(13,800秒)の出稿量の多さが際立っています。これは6サービス、27地区中最多となっている一方で、鹿児島をはじめとする5地区の出稿量はゼロであるという、「メルペイ」のマーケティング戦略が見えるような結果です。

3. 特定のエリアに限定して出稿するパターン
「Origami Pay」は特定の地区のみに出稿をしたパターンです。こちらは関東・関西・名古屋・北部九州の4地区のみの出稿で、対象期間中その他の地区ではテレビCMの出稿がありませんでした。この期間の「Origami Pay」のキャンペーンを調べたところ、関東の店舗限定のものや、福岡市限定といった地域限定のキャンペーンも多数みられました。また、このアプリはタクシー会社とも提携をしており、タクシーの乗車賃決済時に利用することができるという特徴があります。しかしながら、利用できる地域が関東を中心とした大都市に限られているため、限定的な出稿を行っているようです。
このように、一口にQRコード決済サービスとはいっても、各サービスのCM出稿量、出稿戦略は様ざまであることがわかります。

QRコード決済サービスCMの盛り上がりはいつごろから?!

続いて、CM出稿状況を時系列でみていきましょう【図表4】。

【図表4】
QRコード決済サービスCMの出稿状況 27地区計(2018年7月1日~2019年6月30日)

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まず、他社に先駆けて2018年7月に「LINE Pay」の出稿が確認できます。その後の2018年12月に、出稿量の多い時期、第1の大きな波が訪れます。この時、「PayPay」は加盟店で決済を利用すると決済額の20%相当の「PayPay」残高が還元されるという「100億円あげちゃうキャンペーン」を実施しました。想定よりも多く利用され、企画の終了を切り上げたことで世間を賑わせたことを覚えている人も多いはずです。
また、「LINE Pay」も対抗するように、対象の店舗で「LINE Pay」の支払いをすればキャッシュバックが受けられるという「Payトク」というキャンペーンを展開しており、2018年の年末にキャッシュレスサービスの市場は大きな盛り上がりをみせました。2018年はキャッシュレス元年と先述しましたが、年末の集中的な出稿の影響もあったのではないでしょうか。
2019年の序盤、CMの出稿は一旦落ち着きをみせます。この時期は、4月に「d 払い」がキャンペーン期間中にAmazonで一定額以上「d払い」を利用したユーザーに対して、dポイントを進呈するというキャンペーン時にCMを出稿しています。続くように、同じく通信キャリア系の「au PAY」がゴールデンウィーク前後で多くのCMを投下しています。
こちらはサービス開始が2019年4月ということもあり、キャンペーンの宣伝ということもさることながら、サービス認知の目的があったともいえそうです。
そして、第2の波として挙げられるのが、2019年6月です。ここでは第1の波だった昨年末にせまるほどの出稿がなされています。多数のサービスの出稿がみられ、QRコード決済サービスが盛り上がっていることが窺えますが、中でも「メルペイ」の出稿量が突出して多いです。これはキャンペーンとリンクしており、対象期間中に一定の条件を満たすと最大70%のポイント還元が行われるという大々的なものでした。また、第1の波と第2の波があった12月と6月は、企業のボーナス時期とも重なっています。ボーナスによる消費者の購買意欲の高まりもうまく捉えてキャンペーンを設定し、CMを出稿していた可能性も考えられます。
ここまで、QRコード決済サービスのテレビCM出稿状況を、いくつかの切り口でみてきました。同じQRコード決済サービスといっても、出稿する地域の数や出稿の量はサービスごとに異なっており、年末年始やボーナス時期といった節目節目でのCM出稿を挟みながら、キャッシュレスサービスの市場は盛り上がっていることが分かります。さらに、この10月、消費税率引き上げに伴い、キャッシュレスサービスのポイント還元も行われるため、キャッシュレスサービスの普及に弾みがつくと考えられます。10月以降の各サービスの動きに注目です。「テレビCM速報」ではCMの出稿状況が全国規模で確認でき、銘柄ごとのエリア別の出稿状況やキャンペーンに合わせた戦略や実態を把握することが可能です。今後もCM出稿の動向をタイムリーに紹介していきます。

※【図表3】【図表4】のデータは関東、関西、名古屋のいずれかで出稿されたテレビCM素材を対象に集計しています。





テレビCM速報とは
全国各地でのエリアマーケティングにおいて、テレビCMの活用をデータで支援することを目的に、テレビCMの出稿状況を全国規模(27地区)で、かつスピーディーに確認できるサービスです。

[ 特徴 ]
● 自社キャンペーンのアクチュアル管理に出稿計画に対する達成状況を日時で
  管理することが可能
● 競合他社のCM出稿状況把握に競合社の動向(新CM、出稿傾向、出稿量など)を
  いち早く察知・把握することが可能

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