【 鈴木おさむ の WHAT'S ON TV ? 】ドキュメンタリーの中のエンタメ性
【 鈴木おさむ の WHAT'S ON TV ? 】第47回
NHK「ドキュメント72時間」がレギュラー放送開始から10年の節目を迎え、先日「歴代ベスト10スペシャル」という特番が放送されました。ありがたいことに、私も司会として参加させていただきました。ちなみに1位は名作「秋田・真冬の自販機の前で」です。
僕はNHKの強みの一つとして、民放だとなかなか入れない所にもカメラが入れるところがあると思う。今回のベスト10にも入っていた「恐山 死者たちの場所」、あれはすごい。恐山の存在は知っていたが、映像で見る機会はほぼなかった。「ドキュメント72時間」では、三日間、恐山にカメラを入れて、そこに来ている様々な悲しみを背負った人達にカメラを向けた。あれはNHKだからこそできたことだと僕は思う。
そして、この番組が素晴らしいのは、三日間取材するという企画が乗ることによって、ドキュメンタリーの中にエンタメ性がプラスされていることである。
大きな病院のコンビニにカメラを入れるのもなかなか難しいことだ。一時間取材するのだったら分かるが、三日間カメラを入れて取材するのはとてつもなくハードルが高い。
そして、カメラを向け、「NHKの『ドキュメント72時間』です」と言った時に、「NHK」と聞こえてくるのはものすごい安心感。「許してしまう人」が多いと思う。民放だともっと警戒されてしまい、こうもうまくはいかないと思う。
僕はNHKにはNHKにしかできない番組をたくさんやってほしいと思っている。「プロフェッショナル 仕事の流儀」「ファミリーヒストリー」、そして「ドキュメント72時間」。
NHKらしく、そこにエンタメの血液が流れていることによって、見やすくなる。
番組を長く続けることはとても難しい。回数を重ねていくことによって視聴者が飽きてくるからだ。
この「ドキュメント72時間」には、何とか新しいところに踏み出そうと、スタッフが苦しんで作り出した回もある。そういうのが見られるのも長寿番組のおもしろいところである。
番組を続けて、新しい道筋を作ろうと試行錯誤していた頃に、コロナ禍が来た。人にカメラを向けるのが難しい時代になった中、コロナ禍でできることを考えて、作り続けた「ドキュメント72時間」。仕方なく新作の放送回数がかなり減ってしまった年もある。もしかしたら番組を終了することも考えたかもしれない。
だけど、作り続けた。その苦しみはまだ続いているかもしれないが、ふと、2020年の時の作品を振り返ると、そこでしか見られない日本が見える。時代が見える。
この状況で作り続けたスタッフは本当に大変だったと思うが、その中で作り続けたことにより、かなり番組作りの足腰がたくましくなったのではないかと思う。
Netflixには世界のおもしろいドキュメンタリーがたくさんある。だが、日本のドキュメンタリーにおいては、現在、NHKの方がおもしろいものが多いと僕は思う。これって今のテレビ界においてはとてつもなく貴重なことだと思うんですよね。
だからNHKには、これからもおもしろいドキュメンタリー、エンタメの血液が流れるドキュメンタリーを作り続けてほしいと思う。
そして「ドキュメント72時間」。これからの日本をずっと切り取り続けてください。
<了>
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