"観る"から"つながる" Prime Video広告~視聴者の接点変化とAmazonの広告ビジネス戦略~【VR FORUM 2025】

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"観る"から"つながる" Prime Video広告~視聴者の接点変化とAmazonの広告ビジネス戦略~【VR FORUM 2025】

[登壇者](右から)
アマゾンジャパン合同会社 Amazon Ads ジャパン カントリーマネージャー 石井 哲氏
株式会社ビデオリサーチ 執行役員 首都圏ユニットマネージャー 池田 宜秀

2025年4月から日本でもPrime Video広告を開始したAmazon。同社の動画広告を活用したフルファネルマーケティングにはどんな強みがあるのか。アマゾンジャパン合同会社 Amazon Adsのジャパン カントリーマネージャーとして日本における広告事業を統括する石井 哲氏をお迎えし、最新の取り組みや今後の展望についてビデオリサーチの池田が話を伺いました。

日常生活のあらゆる場面に接点がある、Amazonだからこそ可能なフルファネルマーケティング

セッションの冒頭では、石井氏がAmazon Adsの概要について紹介しました。Amazonにはショッピングサイト以外にも、音声デバイスのAlexaや、動画配信サービスのPrime Video、Amazon Musicなど、日常生活のあらゆる場面に接点があることを説明。石井氏は「広告を適切なタイミングに適切な形で、適した方々に届けることがAmazon Adsのミッション」だと話します。

続いて、2025年4月から日本でもPrime Video広告が始まったことに触れ、認知から購買までを動画広告でつなげる広告商品の開発を行っていることを紹介。同社だからこそできる、動画広告でのフルファネルマーケティングについて解説しました。

まず、Prime VideoやFire TV、若年層に人気のライブ配信サービスTwitchは、マーケティングファネル上部の「リーチや認知を広げる」役割を担っています。「検討を促す」=ミッドファネルでは、Amazon 内外のウェブサイトやアプリ上で広告を購入・配信できるサービス「Amazon DSP」やAlexaなどが、広告主からのより深いメッセージを届けます。最後の「購入につなげる」段階では、Amazonのストア上で、インフルエンサーが商品を紹介するAmazon Liveで販促目的の動画広告を流すことが可能です。「Amazon Adsでは認知から購買まで、動画を通して広告主とお客様との接点づくりをしている」と石井氏は語りました。

次に池田が、ビデオリサーチが提供する日本最大級のマーケティングデータ「ACR/ex」を用い、「Amazonと生活者の接点」に関するデータを紹介。Amazonのストアの1か月以内の利用率をコロナ禍前後の2019年と2025年で比較したデータを示し、2019年では38.2%だった1か月内利用率が、2025年には53.9%まで伸長していると説明しました。さらに、一般的には利用率が高まると利用頻度は減少する傾向であるにもかかわらず、2019年と2025年で利用頻度があまり変化していないことにも言及。池田は「この結果から、Amazonのストアがいかに生活の中に浸透しているかがわかる」と見解を述べました。

Amazon.co.jpと生活者の接点

Amazonのストアに出品していない企業でも効果を発揮。Prime Video広告とは?

ここで改めてPrime Video広告とはどのようなものなのか、石井氏から説明がありました。日本では2025年の4月から開始したPrime Video広告ですが、Prime Video自体は世界15カ国で展開しており、グローバルの広告の平均月間リーチはおよそ2億人にのぼります。Prime Videoは、映画やドラマ、ライブスポーツなど様々なジャンルの豊富な作品を取りそろえる動画配信サービスで、オリジナル作品だけではなくテレビ由来のコンテンツもふんだんに含まれています。Prime Video広告ではそうしたコンテンツの中に最適な形で、具体的にはプレロール(再生前)とミッドロール(再生中)の2パターンで広告配信をしていると解説しました。

それでは、どんなクライアントがPrime Video広告を利用しているのでしょうか。石井氏は、Amazonのストアに出品している広告主はもちろん、出品していない広告主からの出稿も多いと明かします。例えば自動車産業、流通、金融、保険、小売り、外食など様々な業種があり、BtoB企業の出稿も多いことに驚いたと石井氏。Prime Video広告が企業のブランディングにも活用いただけるという新たな発見があったと話しました。

続けて石井氏は、Prime Video視聴者の購買行動傾向に関するデータを紹介。AmazonのデータによるとPrime Video視聴者の93%が、毎月Amazonのストアで買い物をしていることが明らかになりました(※1)。またある調査によると、広告を見て商品の購入意向が高まると回答した割合が、Prime Video視聴者は一般消費者と比べて33%高い結果となりました(※2)。実際に自動車や旅行などAmazonのストアに出品していない企業でも、既存のメディアプランに追加でPrime Video広告に出稿することで想定以上の成果が出ていると説明しました。

※1 出典:Amazon内部データ、2023年8月~2024年8月
※2 出典:GWI, 4 Waves (Q1'24-Q4'24), Japan. Base: A18+. Japan. Base: A18+.
Compared Japan Adult 18+ Prime Video Users to the average Japan Adult 18+.

Prime Video広告だけでなく、複数のAmazon Adsに出稿することで相乗効果が生まれる

続けて石井氏は、Prime Video広告だけでなく、それに加えてFire TVやTwitch、Amazon DSPなどを介して複数の動画広告フォーマットに出稿することが、より効果的な運用方法であることを解説。複数の動画フォーマットを組み合わせた出稿の場合、Prime Video広告単体での出稿よりも、ファネルの各段階で相乗効果が見られることを示したデータを紹介しました。

複数の動画フォーマットに出稿した場合、ブランドリフト=ブランドに対する好意度は+182% に、検討促進は+56%に、購入率は+176%にとそれぞれ上昇。さらに新規顧客獲得は+230%と、大きく上昇していると話します(※3)。Prime Video広告ができたからこそ、Amazonが保有しているすべての広告フォーマット・プロダクトを駆使することで、フルファネルでの効果が期待できるようになったと述べました。

この結果を見て池田は、「トップファネルのPrime Videoで、よいコンテンツと共に質の高い動画広告に触れることにより相乗効果が生まれている」とコメントしました。

アマゾンジャパン合同会社 Amazon Ads ジャパン カントリーマネージャー 石井 哲氏

その後、石井氏は具体的な事例をもとに、Prime Video広告とAmazon DSPなどその他の広告フォーマットに同時に出稿した場合の、リーチの重複状況を分析した結果を紹介。当該事例では、リーチ重複率は7%以下とかなり低い結果になったことを説明しました(※4)。

さらに、広告接触経路ごとの購買率を分析したデータを用い、Amazonのストア内のスポンサー広告単体での購買率を基準値とした場合、他の広告フォーマットを足すとどれだけ購買率が上がるのかを解説。単純にPrime Video広告を追加すればいいというわけではなく、接触する広告フォーマットの順番によっても購買率が変動するという発見もあったと話します。まずPrime Video広告で認知を取り、その後にAmazonのストア上で配信したスポンサー広告、最後にAmazon DSPのディスプレイ広告やビデオ広告で刈り取りにつなげていくと、購買率は基準値の+933%にまで上がったことを説明しました(※5)。

Amazon Adsでは認知だけではなく検討や購買、新規獲得など、広告主が気にする様々なコンバージョンに関して計測方法を持っている。多様な組み合わせ・順番で出稿した上で、キャンペーンの最終的な結果をデータを用いて広告主・広告会社のみなさんと振り返り、次のキャンペーンのプランニングに活用していただいている」と石井氏は語ります。

※3 出典:Amazon内部データ、日本、2025年4月8日~2025年7月30日
※4・※5 出典:Amazon調べ(2025年4月~2025年5月)による、個別事例の分析結果

広告主と視聴者、双方の要望に応える、Prime Video広告の新しい広告フォーマット

日本でのサービス開始からおよそ半年で、多くの広告主から利用されているPrime Video広告。今後はどのような機能をリリースしていくのでしょうか。石井氏は今後実装が予定されている3つの広告フォーマットを紹介しました。

1つ目は、「FITO(ファーストインプレッションテイクオーバー)」です。これは、視聴者がその日最初にPrime Videoでコンテンツを再生した際に出るプレロールの広告枠へ、独占的に広告配信できるサービス。例えば新商品の発売初日に多くの視聴者に広告を届けたいときなどに効果的な機能で、多くの広告主から要望があった機能でもあると石井氏は説明しました。デジタル広告においてよく言われる、自社広告がどのタイミングでどこに出稿されるのかがよくわからない、という課題を改善した広告フォーマットでもあるといいます。

2つ目は「インタラクティブ動画広告」。このフォーマットでは動画広告が流れている上にクリッカブルなボタンが表示され、視聴者がリモコンで操作することで、Amazonのストアのカートに商品を追加したり、ストアの出品がない場合にはスマートフォンに情報を送ったりすることができます。コンテンツの視聴体験を阻害せずに、商品をカートに入れるという購買行動にまでつなげることができるのが特徴です。また、アンケート調査をせずとも、商品への興味や購入検討のシグナルを後で分析できる点もポイントとなっています。

3つ目は「インタラクティブポーズ広告」です。これは視聴者が動画コンテンツを一時停止した際に広告を流すことができるフォーマット。前述の「インタラクティブ動画広告」と同様に、リモコン操作で商品をAmazonのストアのカートに追加することもできます。一時停止のモーメントを捉えて、広告主のメッセージを伝えることができないか、という試みだと石井氏は話します。

この3つの新たな広告フォーマットについて池田は、「ユーザーから見ても便利な広告であり、また広告主にとっても購買行動につなげることができる素晴らしい機能である」とコメント。今後ますますPrime Video広告の活用が広がっていくだろう、と感想を述べました。

株式会社ビデオリサーチ 執行役員 首都圏ユニットマネージャー 池田 宜秀

Amazonの動きから、これから求められるデータ連携の可能性を考える

ここまでの話で、Amazonでは自社が展開するサービス上のシグナルを解析でき、広告の効果分析まで可能だということが見えてきました。とはいえ、ビデオリサーチのデータによれば日本でのAmazonのストアの1か月内利用率は現状で5割と、全体の半数の規模となっています。

そこで、広告がどれだけ売上に寄与しているのか?というテーマはグローバルでもトレンドとなっている状況をふまえ、現在海外で進んでいるデータ連携の取り組みに目を向けてみたいと池田。米国では「ROKU」や「Paramount」などの大手配信サービスプラットフォームや放送局と、「Walmart」などの小売店とのデータ連携が行われていることを紹介し、データ連携によって広告出稿がどれだけ売上に寄与しているのかを把握できる体制作りが進んでいると述べました。

石井氏は、Amazon Adsもアメリカにおいて「ROKU」との連携を開始していることを紹介。さらに、Amazon DSPを通じて、国内外の大手動画配信サービスと連携できる体制になっていると話しました。

ここで池田はビデオリサーチが提供するサービスについても触れ、「現在YouTubeとやっているクロスメディアリーチレポート(CMR)のように、Amazon とビデオリサーチが協力していくことで、テレビCMとAmazon Adsを組み合わせた広告効果をフルファネルで計測するなどの取り組みも考えられる」と今後の可能性を語りました。

最後に、今回のセッションから得られた示唆について両者がコメントしました。

まずは池田が、アナログの時代には媒体ごとに分かれていた広告の役割が、デジタル化が進むことによって曖昧に、さらに統合されてきていることに言及。実際にAmazonは購買データに加え様々なメディアを持っており、フルファネルで広告が購買にどれだけ寄与したのかをすぐに見られるようになっています。さらに、「広告ポジションの固定やタイミングの出し分けといった機能追加やパートナーの拡大によって、媒体の広告価値が再確認されるという、媒体社視点での大きなヒントをいただいた」とコメント。「その中でビデオリサーチは相対評価の領域や、様々なパートナーをつないでいく役割などで役立てるのではと考えている」と語りました。

続いて、「Amazonが持つ様々な接点のデータを連携させることで、広告主だけでなくパブリッシャー にも還元できると思っている」と石井氏。パブリッシャーが自社で持っている1st PartyデータとAmazonのシグナルをデータクリーンルームで突合することで、パブリッシャーが保有するコンテンツやその中の広告と、Amazon 側の購買やコンテンツの視聴・広告接触の状況を紐づけることが可能に。「コンテンツマーケティングの際に、視聴者の行動特性やデモグラフィック別のニーズ分析などができることは、広告主側・パブリッシャー側の双方に活用いただけると思っている。今後展開していく際には、まさにここがビデオリサーチの出番だと思うのでぜひ連携していきたい」と述べ、セッションは終了しました。

アマゾンジャパン合同会社 Amazon Ads ジャパン カントリーマネージャー 石井 哲氏・
株式会社ビデオリサーチ 執行役員 首都圏ユニットマネージャー 池田 宜秀

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