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メディア
2020年01月17日

「テレビを見る」って何を見る?~生活者と「映像コンテンツ」の"いま・これから"第七回~

對馬友美子
ソリューション事業局 ひと研究所
對馬友美子

「テレビを見る」って何を見る?~生活者と「映像コンテンツ」の

テレビ放送以外で、テレビ番組あるいはそれに類似した映像コンテンツを見る機会や手段が拡がりつつある昨今、本連載でも、インターネット動画を利用する人が全体の7割にのぼることや、テレビ画面にインターネット動画を映して見ている人の視聴状況などを紹介してきました。(連載第1回目3回目

本シリーズ7回目は、"テレビを見る"意識の変化に着目して、今の生活者にとって「テレビ」とは何か?生活者から見た「テレビ」も含めた映像コンテンツの存在について様々な視点から考察していきます。

<ポイント>

■若年層を中心に「テレビを見る」の意味合いが、「据え置き型のテレビでリアルタイム放送や録画再生番組」だけでなく「スマホで動画配信されている番組を見る」にも広がりつつある

■生活者と「テレビコンテンツ」の接点は増えている。それは同時に、今後、他のメディアやコンテンツと生活者の可処分時間を奪い合う熾烈な競争に突入していくということ

■そんな中、選ばれるコンテンツになるには?可処分時間を『メディア・ポテンシャル時間』ととらえてみる

"テレビを見る"意識の変化に着目

ネット動画の歴史をあらめて振り返ってみると、利用が目立つようになってきたのはアメリカでYouTubeが誕生した2005年以降です。日本では翌2006年に、YouTubeやニコニコ動画といった動画共有サイトの利用者が1100万人を超えました(ビデオリサーチインタラクティブ 2007年3月プレスリリース)。当時はPCでの視聴が多かったのですが、スマートフォンの登場によりモバイルでの視聴にシフトしていきました。スマートフォンの普及率が50%を超えたのは2015年(総務省「通信利用動向調査」)。TVerによる見逃し配信サービスの開始、NetflixやAmazonPrimeVideoの参入があったのもこの年。テレビ受像機のインターネット結線率が3割を超えたのは2018年のことです(ビデオリサーチ「ACR/ex」全国7地区計)。

このように振り返ってみると、生活者がテレビ放送以外の映像コンテンツをテレビ受像機以外のデバイスで見られる環境が拡がり始めたのは、ほんの最近であることがわかります。
一方で、日本においてテレビ放送が開始されたのは1953年です。
ネット動画の登場がこの15年弱であることを考え合わせると、「テレビ受信機でテレビ番組を見る」という生活習慣や体験は、今の若年層でも少なからずあるということになります。
長年の生活習慣であった「テレビ受像機でテレビ番組を見る」という視聴形態が、昨今のデジタル環境の変化やネット動画の浸透とともに急速に多様な形態へと拡がりつつある現在、私たちは、生活者の「テレビを見る」という意識も変化してきているのではないか、という仮説を立て考察を試みました。

若年層は「スマホで動画コンテンツを見る」も"テレビを見る"の範疇に

現在、生活者があるテレビ番組(コンテンツ)を見ようとする場合、「何で見るか」=デバイス(テレビ受像機/モバイル端末)、「いつ見るか」=タイミング(リアルタイム/タイムシフト/オンデマンド)、「どれで見るか」=プラットフォーム(テレビ放送局/配信会社)それぞれの組み合わせが考えられます(図1)。

図1.「テレビ」視聴手段の拡がり

① デバイス

テレビ受像機だけでなく、スマートフォン、タブレット、パソコンでも視聴可能に

② タイミング

リアルタイム視聴だけでなく、タイムシフト(オンデマンド)視聴に

③ プラットフォーム

映像の伝送路が放送波だけでなく、通信(ネット)にも拡大
テレビ局だけでなく動画配信会社も映像コンテンツを提供

上記を踏まえ普段"テレビを見る"とはどういうことなのか、一般の生活者約2000人に聞いてみました。


「"普段テレビを見ますか"と聞かれた場合、どんな状況を思い浮かべて答えますか」

① リビングなどに据え置きのテレビで、その時放送中の(リアルタイム)テレビ番組を見ること

② リビングなどに据え置き型のテレビで、録画した番組を見ること

③ リビングなどに据え置き型のテレビで、TVerやテレビ局の見逃し配信サービスの番組を見ること

④ リビングなどに据え置き型のテレビで、動画配信サービス(Netflix、Hulu、Amazonプライムビデオ、AbemaTV、YouTubeなど)を見ること

⑤ スマホかタブレットかPCで、TVerやテレビ局の見逃し配信サービスを見ること

⑥ スマホかタブレットかPCで、動画配信サービスを見ること

結果、「①リビングなどに据え置きのテレビで、その時放送中のテレビ番組を見ること」が最も多く85%、次いで「②据え置き型のテレビで録画した番組を見る」45%。その一方③~⑥の配信系サービスのコンテンツについてはいずれも低めにとどまっていました。
テレビ放送以外でテレビ番組に触れる機会や手段が増えている今でも、生活者にとって「テレビを見る」=固定のテレビ受像機で放送中あるいは放送された番組を見る、という認識がまだ大多数であることが改めて浮き彫りになりました(図2)。


図2.「テレビを見る」と聞いて思い浮かべるシチュエーション2.jpg

ビデオリサーチ「"テレビ"の認識に関する調査」2019年10月 web調査 15~69才男女 n=2050
※1見逃し配信=TVer、テレビ局の見逃し配信サービス(日テレオンデマンド、テレ朝キャッチアップ、TBS FREE、ネットもテレ東、FODなど)
※2動画配信=Netflix、Hulu、Amazonプライムビデオ、GYAO、dtv、AbemaTV、YouTube など

しかし、年齢別にみてみると動画サービスについての認識に差があることがわかりました(図3)。10代~30代までの若い年齢層では、「見逃し配信」や「動画配信」のコンテンツを見ることを"テレビを見る"と認識していることが相対的に高かったのです。
「⑥スマホ等で動画配信サービス」を"テレビを見る"と認識している人は、20代で約2割、10代と30代で15%弱でした。また、20代は「据え置き型テレビで動画配信を見る」も"テレビを見る"と認識している割合が他の年代に比べ高くなっていました。
「見逃し配信」されているコンテンツはテレビ番組そのものか、テレビ番組から派生したコンテンツですので、それを"テレビを見る"と認識していても不思議はありません。


図3.「テレビを見る」と聞いて思い浮かべるシチュエーション(年代別)3.jpg

ビデオリサーチ「"テレビ"の認識に関する調査」2019年10月 web調査 15~69才男女 n=2050 
※1見逃し配信=TVer、テレビ局の見逃し配信サービス(日テレオンデマンド、テレ朝キャッチアップ、TBS FREE、ネットもテレ東、FODなど)
※2動画配信=Netflix、Hulu、Amazonプライムビデオ、GYAO、dtv、AbemaTV、YouTube など


一方、ここでいう「動画配信サービス」のコンテンツとは、主にはSVOD、AVODなどの配信プラットフォームに番販されたテレビ番組やそのスピンオフなど関連動画のことと思われますが、テレビ局や動画配信会社の公式アカウント以外からアップされる、テレビ番組を加工・編集した違法動画も含まれている可能性もあります。若い人たちが、「動画配信サービスのコンテンツを見る」ことを"テレビを見る"と認識しているのは、それだけ動画配信サービスを経由して視聴するテレビ番組関連のコンテンツが少なくないからではと推察されます。

実際に大学生や若手社会人にヒアリングしてみると、「YouTubeでテレビ番組のダイジェスト上がってて、それで内容を知った」(大学2年・女性)、「放送時間中はバイト。帰宅後スマホのHuluでドラマを見てる」(大学3年・女性)、「AbemaTVで昔のアニメ時々見る」(20代社会人・男性)など、テレビ番組に関連する動画を配信プラットフォームで見るという声をしばしば耳にします。
若年層を中心に、視聴形態の拡大・多様化で「テレビコンテンツ」への接点が増えたことから、"テレビを見る"の概念が、従来の「据え置き型のテレビでリアルタイムもしくはタイムシフトの番組を見る」という枠に捉われず、「動画コンテンツを見る」という意味としてデバイスや伝送路に関係なく拡がりつつあるようです。

テレビコンテンツの競争相手は、ネット動画だけではない

意識の上では拡がりつつある"テレビを見る"の概念ですが、実際の接触状況はどうでしょうか?視聴時間量のデータを見ながら確認していきます。
毎年特定の1週間に実施している日記式調査のデータ(MCR2019年6月調査)を見ると、テレビのリアルタイムの視聴時間量はいまだタイムシフト視聴、ネット動画視聴を大きく上回っています(図4)。


図4.1日当たりの平均視聴分数(自宅内外計 単位 時間:分)4.jpg

ビデオリサーチ「MCR/ex」2019年6月調査 特定1週間の日記式行動記録 全国7地区計(東京50Km圏、関西、名古屋、北部九州、札幌、仙台、広島) 12~69才男女2019年n=10,814

しかし、2017年の調査データと比べてみると、テレビのリアルタイム視聴時間量はあらゆる年代で減っていることがわかります(図5)。
この場合のテレビ=「テレビ受像機」のことですので、「固定のテレビ受像機でリアルタイム放送中のテレビ番組を見る」時間量は減ってきていると言えます。

図5.1日当たり平均視聴分数の増減 2019年-2017年の比較(自宅内外計 単位 時間:分)5.jpg

ビデオリサーチ「MCR/ex」2017年6月、2019年6月 特定1週間の日記式行動記録 全国7地区計(東京50Km圏、関西、名古屋、北部九州、札幌、仙台、広島) 12~69才男女、2017年n=11,171、2019年n=10,814


一方、タイムシフト視聴分数はほぼ横ばいで、インターネット動画視聴分数は若い年齢層を中心にどの年代も伸びています。
前述したように視聴形態の拡がりから、生活者とテレビ番組関連コンテンツとの接点は増えています。 "インターネット動画視聴"には、「テレビ番組関連コンテンツ」と、「動画発祥のコンテンツ」の両方が含まれていますが、ネット動画の視聴時間量の増加にテレビ関連コンテンツが貢献している可能性は充分考えられます。
ただし、減少しているテレビでのリアルタイム視聴の分が、ネット動画のテレビ関連コンテンツ視聴に移行しているとは言えません。その他のメディア行動も確認したところ、サイト閲覧などの「動画視聴以外のインターネット」の視聴時間量がどの年代も伸びています。他に10代では「ゲーム」、20代、30代は「SNS」が増えていることがわかりました。人の一日の上限は24時間、その中で生活者は、様々なメディアやコンテンツに接触する機会が増えており、自由に使える時間=可処分時間を見据えて、その時の自分にとって最適な選択をしています(第3回連載参照)。
言い換えれば、生活者にとって、「テレビコンテンツ」を見る時間が優先されるものではなくなり、「ネット動画」に限らず他のメディアやコンテンツとの競争環境に置かれ始めた兆しとも言えます。
しかし、生活者の可処分時間の奪い合いの中で、新たな道筋もまた見えてくる可能性もあります。
ここからは、その可能性について考察してみます。

可処分時間は『メディア・ポテンシャル時間』!

まず、生活者がメディアやコンテンツに接触するのはいつでしょうか?
睡眠時間や仕事・勉強をしている時間など、メディアやコンテンツに接触することが事実上不可能な時間を除いても、意外と多いのかもしれません。
今回私たちは、生活シーン別の接触メディアやコンテンツの違いを確認する調査を実施しました。ここではその事例として、一人暮らしのF1(20~34歳女性)の生活シーン別の接触メディアTOP3をご紹介します。ここから生活行動や時間帯によって、選択されるメディアの違いがわかります(図6)。

図6.一人暮らしF1の生活シーン別接触メディア(単位 %)6.jpg

ビデオリサーチ「メディア・ポジショニング調査」2019年10月 全国15~69才男女n=4400 インターネット調査 より、一人暮らしF1(20~34歳女性)のデータを抜粋


一人暮らしのF1層ですので、寝室とリビングが同じ部屋であるケースが多いからか、起床時のベッドの中からすぐにテレビをつけている様子がうかがえます。しかし、同じベッドの上でも寝る前はスマホを触りながら眠りにつく人が多いことがわかります。
テレビのリアルタイム視聴は食事中が多いですが、朝のほうが夜よりもスコアが高く、恐らく時計代わりに使っている人が多いことを表していると考えられます。
また、SNSでも、起床直後はTwitter、通勤中や休憩時間中はInstagramと、時間帯による顔ぶれの違いも見えます。
こう見ると、一日の中に様々なメディアが入り込んでいることがわかります。
デバイスの進化やデジタル環境の変化の真っただ中にある現在、可処分時間とは、メディアにとって生活者に接触できる可能性がある時間、すなわち『メディア・ポテンシャル時間』であると私たちは考えています。

こういった生活文脈にのっとった『メディア・ポテンシャル時間』がどこにあり、そこで選ばれるコンテンツはどういうものか、を考えることは、テレビを含めた映像コンテンツやメディア全般の今後を考えることにつながっていきます。

まず、コンテンツが選ばれるためには、生活者のデバイスシフトやプラットフォームシフト、生活時間や行動に合わせて、物理的に接点を増やすことは必須です。「見たい」と思ったときに視聴ができなければそもそも選ばれませんし、「見たい」と思わせるためには存在を知ってもらわなければなりません。
例えば、高校生や大学生からは「こんな番組やっていることを知らなかった。だから見なかった」という声をよく耳にします。彼ら彼女らの情報接点を把握し、受け入れられやすい形で情報を提供し、認知してもらうことが必要です。

また、コンテンツはどう作っていくべきか、視聴する生活者のニーズやタイミング、ジャンルなどを、気持ちの動きを踏まえて把握し、考えていく必要があります。必ずしもテレビとネットが同じものを作る必要はないですし、競争するのか共存するのかの戦略によっても作り方が変わってくるでしょう。

加えて、大画面や共視聴など「デバイスとしてのテレビ」の価値についても再考の余地があります。スマホの小さな画面では目も疲れ肩も凝りますが、大きな画面ならゆったり見ることができます。つけっぱなしにして食事やSNSでのコミュニケーションなど他のこともできますし、共視聴がしやすいため、家族団らんの演出装置にもなります。その場合はテレビデバイスの利点に合ったコンテンツが選ばれやすくなるでしょう。これは逆に、スマホではどんなコンテンツが適しているのか、を考えることにもつながります。

生活者は、どういう映像コンテンツを、いつどんなタイミングで、どのデバイスで見ているのか。そして、生活者がこれからのテレビを含めた映像コンテンツに求めていることは何なのか
次回からは、プラットフォームやデバイス、タイミングやジャンルなど、映像コンテンツと生活者との様々な関係性をひも解きながら、具体的なヒントを探っていきます。

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