視聴率実践講座 〜その2〜 サンプル世帯別に見る総世帯視聴率、視聴時間量別構成比の推移、視聴分数リストなど

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#テレビ #用語解説 #視聴率

※本記事は1997年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

そもそも視聴率分析とは...

「ちゃんと視聴率を分析しておけよ!」という上司からの業務命令が、業界(広告主、代理店、放送局)で以前より数多く発せられているようです。

中でも、特に我がVR社とiNEX上のRV−TV(視聴率分析)メニュー契約を結んで頂いた企業においては、日常茶飯事ではないかと考えております。たとえば、関東地区ではある番組の番組平均世帯視聴率について、数値としては同じようなスコアが続いたとしても、見ている人が違っていたり視聴分数に変化があったりすることも、RV−TVを利用することにより毎週速やかに分かることになりました。

"家族合意""テレビ視聴の時間帯が一定"などの当時の家庭内の視聴チャンネル選択・生活パターンの状況において、"家族合意"を崩すソフトとしては、「プロ野球中継」「ボクシング世界戦」「目玉の映画」など数少ないものに留まっていたのです。ダイヤル式の家具調テレビが"一家に一台"の時代においては、それだけで充分な視聴率分析であったのです。ある高視聴率番組の視聴率がとある週に急に下がったとしても、「ファイティング原田」「フーテンの寅さん」「長嶋、王、金田」が原因ということで、プロデューサー諸氏が一過性と即座に割り切ることができた時代でもあるのです。

現在の19時〜22時に放送されている番組を見ると、「スポーツ番組」「映画」に加えて、番組のタイトルが同じであっても内容が毎週違うソフトが1時間、2時間ものを問わずに多くなっていること、更に加えて特別番組が年中放送される状況に今のテレビはあるのです。おまけに多チャンネル化まで浸透してしまっているのです。また一方で、テレビ複数所有世帯の増加〔'78年 42.0%→'96年 63.5%〕、平均家族人数の減少〔'78年 3.33人→'96年 2.71人〕(*関東地区ビデオ・リサーチマスター調査結果)による家庭内のテレビ視聴環境の変化、リモコンの普及〔'81年 6.5%→'87年 53.8%→'96年 97.1%〕による視聴態度の変容にも大きなものがあるのです。

以上のことから、現在の視聴率分析は、分析者がこれらの要因からくる視点を加味して初めて意味をもって成立するのです。

...そして現在では

ということで、視点をもって"視聴率を並べるだけ"ではない分析が、現在では必要になって きたのです。そして現代では、少し大げさに思われるかもしれませんが、番組分析を施すこと により番組の企画・立案へのヒントを含めて提案が可能なのです。

「視聴率実践講座」では、これらの分析手法を徐々にご紹介させていただくことに致します。

プロローグ

「景気が良くなるとHUT(総世帯視聴率)が下がり、逆に景気が悪くなるとHUTが上がる」という放送局、広告代理店側から見ると"困った子供"であるのが、視聴率なのです。

バブル経済崩壊後の'91年から'94年にかけて、民放各局は視聴率は好調であるにもかかわらず、局・代理店のスポット広告担当の方の苦労には砂をかむような思いがあったと聞いています。また、特に関東・関西地区で、深夜24時以降の時間帯のHUTの開拓が若い男性によって進んでいった時代でもありました。通常のスポット線引きパターンでは効率的とはなりにくい時間帯であるにもかかわらず、自社のターゲットがその時間帯にテレビを見ていることに気付き、広告展開を積極的に行った機敏な企業もありました。しかし総体的には、企業の宣伝費用の減少を受けて業界苦難の時代であったことは確かでしょう。

さて、分析講座に入る前にプロローグということで、まずはバブル崩壊の前・中・後の関東地区のテレビ視聴状況を、最も基本的な分析手法で見ていくことにします。

分析は'87年の景気好況時、'93年のバブル崩壊時、やや景気が回復の'96年の、それぞれ5月と11月の4週間の期間設定で、関東地区のデータを使用しました。集計の対象は、データが回収されたすべてのサンプルを"有効"と定義しました(後ほど詳しく説明します)。分析の方法は、世帯視聴率調査をお願いしている標本世帯(サンプル世帯と通常は呼ばれています)個別に、1日毎に、全放送時間帯について、同時異局(同時間帯に複数のテレビ局を見ている場合マルチカウントすること)を含めたテレビ総視聴時間量を出し、構成比で見たものです。(図1参照)ご存じかとは思いますが、'87年度は、年平均の全日(6−24時)の総世帯視聴率が43.8%で過去10年間では最も低い、逆に'93年度は47.0%と史上最高を記録した年でもあるのです。ちなみに'96年度の年平均は45.6%でした。(それぞれの月の平均についても表1をご参照ください)

表1 月平均全日(6−24時)総世帯視聴率

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※総世帯視聴率(HUT)については同時異局は含まないのが定義となっています。表1は6−24時の数値ということもあわせて、この分析の完全な背景データとはならないことにご留意ください。

さて、世帯1日あたり視聴時間量別の推移を見てみることにします。'87年と'93年を比べると、5月・11月ともにテレビ視聴量のHEAVY化(増加)が進んでいたといえます。「不景気だし金もないから家でテレビでも見よう。」としていた人も少なからずだったと推察されます。そう言えば、HUTが高かったことによるものなのでしょう、ここ数年は、テレビのソフトに対する金太郎飴的批判めいた意見はしばしばみられましたが、テレビ全体がつまらないという主旨の評論は少なかったような気がするのです。夜の繁華街をうろついたり、海外旅行に出かけたりするのは、テレビがつまらないのが理由ではないのです。起床在宅率に対するテレビ視聴の"歩どまり"が低下したときに、評論側は科学的な批判をすべきなのです。'87年から'93年にかけても平均家族人数の減少傾向は続いているのです。つまらないけれど我慢してテレビを見ていると思うのならば、身近な話で想像でものを語るのではなくその証明をしたらよいのです。なぜならば、確実にテレビは1世帯あたり平均で8時間以上スイッチが付けられている日本人に密着した生活道具なのですから。

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ちょっと余談が長くなりました。話を元に戻すことにしましょう。'93年に比べやや景気回復といわれる'96年は、5月と11月に共通する傾向として、6時間未満のテレビ視聴量が比較的少ない世帯が増えたことがあげられます。一方で11時間以上の世帯については、5月と11月では相反する傾向を示すことになりました。'96年の6−24時の月間HUTは、それぞれ44.9%(5月)、44.4%(11月)とあまり違いはありません。11月は'93年と比べると全般的に視聴がやや減少しているのに対し、5月は8時間前後の平均的なテレビ接触世帯が減り、テレビ視聴の2極化現象が見られるということになります。5月はプロ野球、大相撲中継などが放送されていることが理由と考えられます。いきなり、1日を1つの番組と考えたスケールの大きな分析事例の紹介になりましたが、番組個別についてもこの手法が基本となるのです。

視聴分数リスト

図−2は、本年度1〜3月の大河ドラマのデータで個表と放送日の推移のイメージを示したものです。初回の1月5日(日)は、恒例により75分に拡大して放送されています。まずはこのリストのデータとしての"見かた"を説明します。サンプル例Aの世帯は、初回の拡大スペシャルの視聴のみにとどまっています。トライアル視聴後、何らかの理由で今年の「毛利元就」は見なかった世帯ということになります。民放で放送されている20〜22時台の1クールタイプの連続ドラマについても、このような世帯が多い場合は具合が悪いということになります。BとCの世帯では毎週ほぼ完璧な番組接触を果たしているサンプルということになります。DとFは、この期間内に「ローテーション」の対象となった標本世帯です。関東地区の視聴率調査対象となっている600世帯について、2年ローテーションということで、毎月25世帯入れ替わっている実態を、具体的に目で見ることのできるリストでもあります。番組関係者からするとDは喜ばしい、Fは残念なローテーションということになります。

「毛利元就」の番組素性は連続ストリー系時代劇ですから、番組の放送枠の最初から最後まで、そして欠かさず毎週見るのが視聴者側の正しい"見かた"なのです。どんな番組のプロデューサーにとっても願いは同じなのでしょうが、他ジャンル、タイプの番組ではなかなか難しいことなのです。当然、番組平均世帯視聴率を眺めていてもわかることではありません。まずは視聴分数リストを見ることにより明らかになるのです。−般的には、番組平均世帯視聴率央該当調査エリア内世帯数の数値が、"番組を〇〇万世帯が見た"として新聞記事に載りますが、この〇〇万世帯はあくまでも"目安"の数値なのです。視聴率測定の最小単位である毎分視聴率については"見た・見ない"の数値なのですが、番組の場合"長さ"がありますから、標本個別に、"見た・見ない"については実は決める必要があるのです。例えば、54分番組に対して1分でも見たら"見た"とするのは乱暴でしょうし、全部見なければ"見たとしないよ"とするのも、リモコン全盛時代ですから条件としては厳しすぎるということになってしまうのです。あくまでも、分析の目的と視点にリンクした視聴判定条件分数設定を決めるべきということなのです。

(視聴判定の決め方のテクニックについては後章での紹介となります。)

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視聴分数分布

視聴分数リストを見て最も自然に考え得る視聴質とは、番組を"最初から最後まで"そして"毎週欠かさず"という視聴者側の"見るスタイル"ということになります。番組に対する評価のコメントとしては、"しっかりと見られており、かつ視聴者の視聴の習慣性も非常に高い番組"という最高の賛辞が与えられるのです。番組の内容が上品であるとか下品だとかいうことには、全く関係がないことなのです。関東地区では、PM化により、個人レベルでこの分析が、ベルト番組以外でも可能になったのです(図−3参照)。ただし、本当にテレビの前で毎週微動だにせず番組を見ているのか、感動しながら見ているのかは、何らかの意識のデータが必要となるのです。番組が少ない人々からの支持にとどまって低視聴率であったとしても、"評価の深み"は高視聴率番組より以上のものがあるのかもしれないのです。

(尚、図−2の視聴分数リストについては社内用のデータとなっております。お客さまへの提供は分数分布データ以降のものとなります。)

(本社情報分析部 媒体分析課 加納永−)

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