視聴率実践講座 〜 その5 〜視聴率判定、到達率、平均視聴回数などによるリーチ&フリークエンシー分析まとめ

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#テレビ #用語解説 #視聴率

※本記事は1997年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

第1章 リーチ&フリークエンシー分析 まとめ

今回は、前回・前々回と2回にわたって紹介させていただいたリーチ&フリークエンシー分析についてのまとめをすることにします。

まずは、分析用語について簡単に定義をしておきたいと思います。視聴判定を施しての結果の数値については、"到達率"という表記をしました。視聴率とは違う意味を持つ数値であるからです。加えて、判定条件等によりスコアが変わることも理由です。視聴率はあくまでも一定のルールで日々計算された結果で不変なのです。リーチ&フリークエンシーを直訳すると"到達率と視聴回数"ということになります。視聴回数のデータについては、①平均視聴回数(Averaged Frequency)②視聴回数分布(Frequency Distribution)の2種類があることは既にご紹介済みです。リーチについても本来は、①到達率(Reach)②累積到達率(Cumulative Reach)の2種類があります。単なる到達率は番組単時点に対して視聴判定した数値で、累積到達率は複数の番組時点に対して視聴判定を行った結果ということになります。しかし、「Reach=累積到達率」という考え方が業界に広く浸透してしまっていることも確かな事実なのです。Frequencyについても平均視聴回数という意味で広く使われています。その背景には、視聴回数分布データについては、データそのものが未だ余り使用されていないという実態があります。よって、リーチ&フリークエンシー分析は、一般的には累積到達率と平均視聴回数を求める分析ということになります。

累積到達率(Cumulative Reach)と区別するために、「到達率」という日本語を単時点の視聴判定を意味するデータ用語とすることが無難であると考えられるのです。厳密には違うのではないかという意見の方もいらっしゃると思いますが、ご容赦願います。

第1章のおさらい

さて、第1章のおさらいということで、ある番組「Z」についての分析事例を説明したいと思います。「Z」は、'96年に放送された1クール完結の連続ストーリー系ドラマ番組で、放送分数は54分です。視聴分数分布、平均判定到達率、累積到達率、平均視聴回数データともに標本の有効無効条件は"ローテーション世帯のみ無効"、視聴形態については"断続"、リーチ&フリークエンシー関連データについては視聴判定条件1/3、での関東地区データの主婦年齢プロフィール別分析です。

A.視聴分数分布

放送11回の平均視聴分数データをみると、49分以上(放送枠マイナス5分以上)しっかりと視聴している世帯が非常に多いことから、この番組は高視聴率番組であったことがうかがわれます。特に、主婦年齢49才以下の世帯で好評だった番組であることがわかります。

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B.平均判定到達率(視聴判定1/3)

放送の長さに対して1/3の条件となる"18分"以上視聴した世帯の11回平均数値です。世帯全体で31.8%となっており、関東地区1450万世帯のうち、1/3視聴判定条件のもとに放送毎に平均では約460万世帯がこの番組に到達していたということになります。

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C.累積到達率(視聴判定1/3)

全体で64.5%の世帯が見たことがある、という結果となっています。関東1450万世帯に掛けると、なんと約935万もの世帯が1/3視聴判定条件のもとでこの番組に累積で到達していたことになります。

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D.平均視聴回数(視聴判定1/3)

1/3視聴判定条件のもとで、分析対象期間内に番組到達に至らなかった世帯を除いた番組到達世帯の平均視聴(=到達)回数データです。世帯全体では、平均で5.4回となっています。

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E.視聴回数分布(視聴判定1/3)

全体で21.3%の世帯が、毎回のように(放送11回のうち8回以上)この番組を見ているという分布データが得られました。連続ドラマで高視聴率であるにもかかわらず、1〜7回の分布が多いことも目立ちますが、何らかの理由でシリーズの途中から視聴参入した世帯が多いということでしょう。完結に近づくほど、番組平均世帯視聴率が盛り上がっていたことがうかがわれるのです。

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第1章のまとめ

番組分析は個別でなく、分析の目的に応じて、時系列・裏番組・類似番組との比較の中で行われることが多くなっています。番組個別に行う場合は、世帯特性・個人特性の中での比較ということになりますが、あくまでも番組の状態を表すデータなのです。視聴率そのもの、そして分析結果において制作者の意図したターゲットで優位が見られるか否か、というコメントに留まります。

比較分析をする時には、第2章以降のご紹介となる各種の手法を併用してということになります。

(本社 テレビ調査部 加納永−)

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