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テレビ
2020年07月08日

新連載 USAメディアレポート「米テレビ局がもつ3つの魅力」

谷口 悦一
ビデオリサーチUSA 社長 
谷口 悦一

新連載 USAメディアレポート「米テレビ局がもつ3つの魅力」


本号よりスタートした連載企画。テレビを取り巻く視聴環境やビジネスの枠組みが大きく変化している中、アメリカのメディア業界と市場は今、どう変化しているのか、そのトレンドをビデオリサーチ USA社長の谷口がレポートします。

巷では、「テレビ離れ」と言われるようになって久しく経ちます。しかし、テレビ業界の最先端を行くアメリカでは、この10年を「ゴールデン時代」、一部では「プラチナ時代」と呼ぶ人がいるほど、テレビを取り巻く環境は充実を極めています。その要因として考えられるのが「CDC」。
USA情報発信の1回目は、私が昨今アメリカの業界をみて感じている「CDC」を紐解いていきます。

キーワードは「CDC」

アメリカではこの30年間に、視聴スタイルが多様化、複雑化しました。従来、据え置き型のテレビで地上波をライブで見るだけだったものが、ケーブル配信会社経由でのライブ、DVR、VODなど様ざまに進化したからです。また一時は、デジタルプラットフォームへ視聴者が流れてしまうのではという大きな懸念がテレビ業界にありましたが、そのテレビ局もデジタル対応が進んだことによって、テレビ局にとって大きなビジネスチャンスとなっています。もちろん、OTTを含むデジタルプラットフォーム社に対する危機感が無くなったわけではありませんが。

この現状を説明するにあたり、キーとなるのは「CDC」だと考えます。
ひとつ目は、番組、広告などを含めた「コンテンツ(Contents)」。
ふたつ目は、配信方法・配信経路などの「ディストリビューション(Distribution)」。
そして最後は「コネクション(Connection)」です。

あらためて「コンテンツ(Contents)」重視の流れへ

まず、ひとつ目の「コンテンツ」ですが、アメリカではテレビコンテンツに対するビジネススキームが変化しています。ネットワーク局が単体で独立採算していた頃は、広告収入以外では主にリニア(=地上波 編集部注釈)でライブ放送したものに対し、その放映権をシンジケーション系のテレビ局が買い取り、系列局に再放映する権利を売却するという流れで収入を得ていました。

しかし、現在は、テレビ局をめぐるM&Aが繰り広げられています。たとえば、Disney社の傘下にABC局が入ったため、ABCの番組がDisneyのOTTであるDisney+で配信されるなど、ABC局だけではない系列のプラットフォームでも視聴できるようになっています。

それとは逆に、同じ局の番組でも、ひとつのプラットフォームでは見られないというケースもあります。CBS局は『スター・トレック』という人気のSF番組シリーズを有していますが、これは、CBS All AccessというCBS局の単独のプラットフォームでしか視聴できません。視聴者は、地元のケーブル配信会社と契約し、通常のリニアのCBSの番組を見ることができても、最新作の『スター・トレック』を見るには、CBS All Accessにも別途契約しなければならないのです。

なぜ、このような方式を導入することになったかというと、多様化する視聴動向や選択肢の時代に視聴者を囲い込んで、新たな収入源を確保するためです。従来は、リニアで放送して、その広告収入を得るだけで終わりでした。その次のステップとして、広告収入にプラスして、ケーブルの再放送料を得るようになりました。さらに、デジタルが入ったことにより、Disney+、CBS All Accessのような、新たなマネタイズの方法が生まれているのです。

その中でも注目すべきはコンテンツの販売です。

キー局、ローカル局を含め、放送局がケーブル配信会社から得ている番組再発信料「re-transmission fee」は、年間120億ドルにも上ります。これは、テレビ業界の年間の広告収入の1/5にあたる金額です。放送局は、極端な話、何もしなくても120億ドル(約1.3兆円)もの収益を得ていると言えます。これによって資金が潤沢となり、新たな番組制作や、データ設備、人件費などに充てられています。

日本もキー局がつくった番組を、ローカル局やケーブルテレビに再販していますが、アメリカのコンテンツ料の相場は、比較にならないほど高くなっています。それは、ケーブル配信会社が有料契約のため、とにかく視聴者が見たいと思うようなコンテンツを集める必要があるからです。しかも自社コンテンツを持っていないため、テレビコンテンツがますます重宝され、価格の高騰に拍車がかかるということです。

ニーズが支える「ディストリビューション(Distribution)」の余力

「ディストリビューション」に関しては、デジタル経路での配信の割合がどんどん大きくなっていくことが見込まれます。あるオンラインユーザー2,000人に対する調査(2019年、Vorhaus AdvisorsがVidCon2019カンファレンスで調査結 果発表)をもとに、アメリカの全人口を推計すると、約50%が何らかの形でデジタル・ビデオ(VOD、OTT、YouTubeなど) を利用していると考えられます。これを、メディアの最も重要な層と言われる18歳~34歳に絞ると、全体の約75%に達する計算になります。さらに、そのうちの11%が「2020年までにケーブルテレビをコードカッティング(契約解除)する」、10%が「多分する」と回答しています。(2019年7月のVidConカンファレンスでのVorhaus Advisorsの調査発表)

デジタルビデオの中で、一番アメリカで顕著な増え方をしているのがSVODです。特にNetflixやAmazonのように、良いコンテンツを持って放送局に挑んでいるというようなところが有料にもかかわらず伸びています。2020年現在、アメリカの人口約3億3,000万のうち、その半数がNetflixユーザーとも言われています。

このような圧倒的なシェアのなか、前述のDisney社が2019年に「Disney+」のサービスを開始しました。Amazon、Huluのほか、CBS All Accessなど放送局が提供するサービスも複数ある中、どこまでシェアを伸ばせるのか注目を集めましたが、結果は、開始1ヶ月で加入者2,400万人を達成しました。

なお、注目すべきポイントは、新規加入した2400万人の大多数が、他のサービスを切り替えずに追加でDisney+に加入したということです。同調査によると、アメリカの世帯または個人では、平均2社の配信サービスに加入しており、その内訳の大部分がNetflixとAmazonでした。この層が金銭的に、さらに追加できる配信サービスは、平均1.6社という回答が得られています。良いコンテンツ、見たいコンテンツがあれば、有料サービスに複数課金するというのが、アメリカではスタンダード。さらに追加加入の余力を狙った競争が激化しているというのが現状です。まだまだ業界の規模は拡大すると言えるでしょう。

時、場所を超えて「コネクション(Connection)」できる時代に

アメリカのテレビ業界の下支えとなる要因のひとつとして、デジタルネイティブな若者の間で、今もなおテレビが、人と人とのコネクション形成に重要な役割を果たしていることが挙げられます。リアルタイムでスマホやタブレットを使いつつ、「今、この番組を見ている?」「昨日のコンテンツはおもしろかった」「あの広告は見た?」というような会話を交わし、その延長で、学校や会社などでテレビコンテンツの話題を通してコミュニケーションを深めているからです。だから、テレビがないと会話が成り立たない。テレビが文化のひとつとしてアメリカ社会の中に強く根付いていることが窺えます。

なお、ある調査によると、SVODがシェアを広げる一方で、加入者の47%が「番組、コンテンツのチョイスが多すぎる」、43%が「見たい番組の検索に疲れる」という意見も出ています。視聴者が受動的に視聴することができ、圧倒的なリーチで共時性のあるコンテンツ、たとえばリアリティ・ショーといった番組を提供できるテレビは、今後も求められ続けると考えます。

その流れの中で、さらにオンデマンド化が進めば、古いコンテンツも共有できるようになっていくでしょう。かつて子どもの頃に見たコンテンツを、世代を超えて共有することも増えていくでしょう。共時性のあるコンテンツであれ、世代を超えて共有できる古いコンテンツであれ、SNSなどによってリアルタイムにコミュニケーションをとり、離れた家族、友人と、時も場所も超えて共視聴体験(CoViewing)ができる時代では、テレビは人々のコネクションとして、さらに重要な意味を持つようになると考えます。


かつてはリニアだけだったテレビですが、テレビ先進国のアメリカでは、その映像コンテンツは広がり、進化を続けていることが分かります。

それを踏まえると、現在、日本のテレビ業界の主たる収益は広告ですが、今後、視聴環境が変化することで、コンテンツが収益に直結していくと考えられます。

余談ですが、私はよく米国の知人から「日本の放送局はコンテンツ制作において海外の制作会社やメディアと共同で行い、よりグローバルな市場を視野に入れることは考えていないのか」と質問を受けますが、これは今後コンテンツで新たな収益を得るという意味でも重要な検討事項かもしれません。大手グループ傘下のアメリカの配信会社から注目されるようなコンテンツを制作すれば、再販の可能性が広がるからです。これは、日本の放送業界にとっても、大きなビジネスチャンスとなるはずです。少し前に「フィールド・オブ・ドリームス」というアメリカの映画で「それ(球場)を造れば、彼(選手)は来る」という謎のささやきのシーンがありますが、コンテンツでも「良いものをつくれば、放送される(あるいは買われる)」と当てはまるのではないでしょうか。


アメリカの状況をみるにつけ、今後、日本でもプラットフォームを測定するのではなく、コンテンツ自体を測定することがますます重要になると考えます。また、コンテンツの流通においても独自のデジタルプラットフォームの提供、またOTTやYouTube等のプラットフォームを活用し新たなマネタイズを図っています。この数年、どのカンファレンスで発信されていますが、従来の「テレビとデジタル」は共存することは可能です。しかし、テレビは従来の枠を超え形態を変えていく必要があります。今こそ、「テレビ」という従来の概念を壊すときです。ビデオリサーチとしても、コンテンツを捉えるシステム開発や各社との協力体制を強化し、テレビの新たな価値をより的確に測定・定義することがミッションだと考えています。今後の私たちのチャレンジにご期待ください。

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