自社の顧客はどんな人で、どんなメディアを利用している?~コミュニケーション戦略を成功に導く「顧客理解」の実施ステップ~

- この記事はこんな方にオススメ!
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- マーケティング業務を初めて担当することになった方
- マーケティング戦略の立案にもっとデータ活用をしたい方
- 顧客理解をどう進めればいいか迷っている方
「顧客理解」は、マーケターがコミュニケーション戦略を考える上での第一歩です。なぜなら、顧客を深く理解することで、企業やブランドのメッセージをより効果的に届けることができるからです。
ですが、実際に「顧客理解」するにはどうすればよいのでしょうか?
営業に頼んで顧客に話を聞いてもらったり、SNSで口コミを検索してみるのも有効な手段ですが、例えばテレビCMやデジタル広告を活用した大規模プロモーションなど大きな予算が動く取り組みでは、定量的な数値での根拠が求められることも多いです。
そこで本記事では、ビデオリサーチのマーケティングコンサルタント前田より、高級腕時計の販売促進キャンペーンを担当することになったマーケターを例に、どのように自社のターゲットに効果的に広告を届けるか、「広告コミュニケーションの方向性」を決めるための分析方法をお伝えします。
マーケティングの基本を教えてくれるのは...

- ソリューションユニット ビジネスソリューショングループ コンサルタント
前田 直美
データ分析を得意としたコンサルタント。
「課題整理と構造化」「市場分析」「顧客理解」「テレビ局向けPDCA構築」「広告コミュニケーションPDCA構築」などに対応。
2009年熊本大学教育学部(社会学専攻)を卒業し、同年株式会社ビデオリサーチ入社。
【「顧客理解」の実施STEPは大きく3つ!】
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1.顧客となる「ターゲット理解」の必要性
「広告コミュニケーション戦略の方針検討」をするにあたって、顧客となる「ターゲット」の理解をしておくことは重要です。
広告戦略を検討する場合、ターゲットに対して「どのようなメッセージを」「どのメディアで届けるか?」を考えることになりますが、そのターゲットが「どのように商品を選んでいるか」や「どのようなメディアを利用しているか」を理解しておくことが大切です。
ターゲットがまったく触れないメディアに広告を出しても、広告は見てもらえません。また、仮に見てもらえたとしても、ターゲットにとって商品が魅力的に映らなければ、「この商品いいな!」「買いたいな!」という気持ちにはつながりません。限りある経営資源を無駄なく使い、広告効果を高めるためには「ターゲット理解」が不可欠です。
2.ターゲットを理解するための4つの項目
では、「ターゲット理解」を深めるためには、具体的にどのような項目を確認すればよいのでしょうか。
視点は、大きく分けて以下の4つです。
①人口動態特性(デモグラフィック):年齢、性別、世帯規模、ライフステージ、職業など
②地理的特性(ジオグラフィック):居住地域、都市規模、人口密度、気候など
③心理的特性(サイコグラフィック):性格、商品選択志向など
④行動上の特性:メディア利用、購買商品など
データが膨大になると、すべてを分析するのは非現実的です。実務では、この中から、そのときの広告戦略の方針検討に必要な要素を見極めながら分析すると、より効率的にターゲット理解を深めることができます。
3.データを活用した広告コミュニケーションの方向性の決め方
ここからは、ビデオリサーチが保有する日本最大級の生活者マーケティングデータベース「ACR/ex」を用いて、高級腕時計を例に、広告コミュニケーションの方向性を決めるポイントをご紹介します。
ステップ2(ターゲットを決める)では、③の「腕時計所有あり かつ 自社ブランドのトライアル意向者」をターゲットとして設定しました。今回は、広告戦略を立てることを想定して、この『トライアル意向者』がどのような人なのかを深掘りしていきます。
上の図は、ターゲットの『トライアル意向者』のスコアと、比較対象の『個人全体』のスコアをグラフ化して並べたものです。ターゲットのスコアを個人全体と比較することで、ターゲットの特徴がより明確になります。
まずは、『トライアル意向者』がどのような人かを見ていきましょう。分析の結果、「高年収の有職男性」であることが分かりました。さらに、職業の内訳を見ると、特に事務・研究職や経営・管理職が多いようです。
また、どのように商品を選んでいるかを見てみると、センスのよさは意識しつつも「性能・機能」を重視して商品を選ぶ傾向があることが分かりました。さらに、購入のプロセスにおいては、商品を直接お店に行って決めるよりも「事前に調べて買いに行く」人が多いことも特徴的です。
続いて、『トライアル意向者』がどのようなメディアを利用しているかを見ていきます。データによると、「インターネット」や「テレビ」の利用率が高く、交通広告、雑誌、ラジオも半数以上が利用されていることが分かりました。
また、インターネットでは「動画共有サイト」、雑誌では「総合週刊誌」や「トレンド・ビジネス系」、さらに「車関連」の雑誌もよく読まれていることが確認できます。
ここまでのデータから見えてきた人物像をもとに、ターゲットに最適な広告コミュニケーションを考えていきましょう。今回決定した広告コミュニケーションの方向性は、以下の通りです。
・ボーナス支給シーズンの購買行動喚起を狙い、11月末~12月上旬に広告キャンペーンを実施
・「テレビのスポットCM」で、高級・高品質かつハイセンスなイメージの醸成を図る
・「動画共有サイトAの動画広告(商品購買意向層へのターゲティング配信)」「ビジネス誌Aの雑誌広告」で機能性訴求を行い、検索行動~購買へつなげる
ターゲットの職業や購入意識、メディアの利用傾向などをしっかり把握し、それに基づいたコミュニケーション戦略を展開することで、より高い成果が期待できます。
最後に一点、補足です。メディア選定の際、たとえよく利用されているメディアであっても、信頼性が欠ける、ブランドイメージと合わないメディアは出稿先として選ばないことが重要です。たとえば、今回のような高級腕時計の広告が品質の低いサイトに表示されてしまうと、ブランドのイメージダウンにつながる恐れがあります。ターゲットを理解した上で、ブランドイメージを毀損せず、親和性の高いメディアを選定することを意識してみてください。
本記事では、コミュニケーション戦略立案における顧客理解を「ターゲット理解を深める」という観点からお伝えしました。
ビデオリサーチでは、様々なデータを活用し、顧客理解からコミュニケーション戦略立案・効果検証までを幅広くお手伝いしています。本記事でご紹介したような顧客分析や出稿メディアプランの検討は、生活者データベース「ACR/ex」にて分析できますのでご興味お持ちいただいた方は以下より案内資料をダウンロードいただくか、お問合せください。
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※本記事の動画版も公開しています。こちらからご覧ください。