今も未来も楽しみたい「ミライマ消費」の兆し

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今も未来も楽しみたい「ミライマ消費」の兆し
この記事はこんな方にオススメ!
  • 消費者の次の行動のヒントを探りたい方
  • これからの生活者の変化のヒントを探りたい方

次の消費行動の変化は「朝の時間帯」にヒントあり

生活者に関するシンクタンク「ひと研究所」では、ビデオリサーチの生活行動データに基づきながら、生活行動の変化について研究をしてきています。その中でも近年は「朝」の時間帯の生活行動変化に注目してきました。
そのきっかけとなったのは、朝のメディア接触行動の変化の兆しです。ビデオリサーチの生活者の行動時間を調査した「MCR/ex」の時系列データをみると、特に若年層において、朝のインターネット動画視聴がコロナ禍以降、増加していたのです。(図1)。

図1 自宅内のインターネット動画利用行動率(週平均、12-29才/2019年・2021年・2023年・2025年)

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行動率のスコアで見る限り3%に満たない水準ではありますが、コロナが収束してほぼ日常生活が戻ってきた現時点においても高止まりしていることから、若者を中心に朝の接触メディア=インターネット動画という新たな習慣性が生まれてきている可能性があります。

ひと研究所では生活行動データから日中、夕方~夜、夜中の生活行動の違いによって人々の生活パターンを分類しています(図2)。現時点ではまだ朝の行動に特徴があるパターンは出現していませんが、この先、朝の行動が特徴的な人たちが現れることで、新たな生活パターンが生まれる余地もあるのではないかと考えています。朝は、今、生活者の行動を考えるうえでカギになる時間帯といえます。

図2 生活者データから生活パターンを分類した例(ビデオリサーチひと研究所によるデータ分析の結果の例)

朝の消費行動にみる新たな特徴:未来の時間軸でのベネフィットに期待

「朝活」という言葉が出てきて久しく、これを読んでいるみなさんも、すでに何らか朝に活動をされている方もいらっしゃるかと思います。
「朝活」の領域は多岐にわたりますが、「外食業態の朝食市場規模」が24年に過去最高の5190億円に達したとのことからも、朝の時間帯の生活行動からの消費への影響が見てとれます。
(出典:Circana, サカーナ・ジャパン https://www.npdjapan.com/press-releases/pr_20250205/

ひと研究所では、次の生活者のトレンドを見つけるために、生活者動向を探る定性的な調査を行っています。今回、朝の時間帯に注目する中で、特徴的な消費行動を発見しました。

<朝の消費行動とその意図の具体例>

  • 【朝のカフェ朝食】少し値段が高いカフェで朝食を食べて、仕事に向かう。朝をリッチに過ごして、一日の好スタートにつなげたい。
  • 【日曜朝イチの整体】休日の朝から整体に通って、朝イチにリフレッシュ&フル充電。せっかくの休日を1日パワー全開で過ごし充実した日になるように準備する。

朝からカフェで外食、整体に通うという「行動」だけ見れば従来の「朝活」ですが、ひと研究所が着目したのはその裏側にある「心理」です。

共通するのは、朝のこれらの消費行動が、"その日一日のパフォーマンス向上"という未来の時間軸でのベネフィットも期待している点です。消費行動ですから、当然、現時点でのベネフィットがあります。上記の消費行動においては、「おいしい朝食」「体の不調への対処」が挙げられます。それに加えて、「一日の好スタートからの仕事の高パフォーマンス」「心身ともに"充電"してその日一日を充実させる」という、消費行動より少し時間軸が先の未来の時点でのベネフィットも同時に期待しているのが特徴的です(図3)。例えば、一日頑張った「ご褒美」や「癒し」ということでしたら、消費行動の動機の意識は過去にあります。しかし、上記の例は、消費行動の動機が未来にも想定されているのです。

図3 今のベネフィットと未来のベネフィット

若者の美容投資、おしゃれと健康の両立狙いなど、未来にも期待する消費行動の拡がり

そこで、この「未来のベネフィットも考慮した消費行動」に注目し、ほかにも似た事例がないかを追加で検証しました。「未来へのベネフィット期待」は時間帯に関係なく発生する可能性を鑑み、朝活にこだわらず検証範囲を拡げました。すると、次のような事例も見られました。

<「未来へのベネフィット期待」の具体例>

  • 【若年層の美容投資】サロン帰りのような仕上がりになる高額なドライヤーを利用(20代女性)。美容院代の節約にもなるが、髪へのダメージを軽減・潤いを与える効果を期待でき、今の節約だけでなく将来的な美容効果も想定している。
  • 【耳つぼジュエリー】可愛いジュエリーでオシャレをするだけでなく、耳つぼの刺激効果もあることで、体の不調や悩みのケアという長期的なベネフィットにも期待。
  • 【ベスコン消費】おいしい食事やお酒を楽しむための"ベストコンディション"を作るために、先にスポーツクラブで運動をする。頑張ったご褒美というよりも、スポーツクラブでの運動に「今の運動による効果」と「この後の食やお酒のベストコンディション構築」の2つのベネフィットを見出している。
  • 【未来のゲームコミュニティづくり】子育てが落ち着いた50代女性がオンラインのシューティングゲームをプレイ。実は、今の楽しみとしてだけでなく、将来、オンラインゲーム上での友達を作ってプレイすることで社会とのつながりも維持できることを期待しながら練習をしている(図4)。

図4 (事例)未来のゲームコミュニティづくり ひと研究所「生活者の半歩先の時流探索 生活者サーベイ」(2025年10月)

このように、今の消費行動であっても、未来にどのような良いこと(ベネフィット)が得られるかまで考慮しているというのが特徴的です。もちろん、投資、保険、教育といった文脈では、未来に得られるベネフィット(やリスク回避)を前提として、今お金が使われます。しかし、食事やちょっとした消費行動においても"未来を考慮する"というのは新しい傾向に見受けられます。

新たな消費の兆し "イマ"も"ミライ"も楽しみたい「ミライマ消費」

このように、商品やサービスの消費をする際に、今得られるベネフィット(おいしい、オシャレ、など)と同時に、未来に期待できるベネフィット(頑張りが継続できる、長期的に美容効果が期待できる、など)も考慮する傾向が広がってきている可能性があります。
ひと研究所では、このたび、この消費の傾向を"未来+今"で「ミライマ消費」と名づけました(図5)。

図5 「ミライマ消費」今得られるベネフィットと、未来に期待できるベネフィットどちらも考慮して消費する傾向を、ビデオリサーチひと研究所はミライマ消費と名付けました

なぜこのような消費傾向が見られるようになったのか、背景として2つの要素が考えられます。

まず「失敗しない消費」ニーズの発展です。コスパやタイパといった言葉が広がりましたが、これは主に若年層を中心に、限りあるお金や時間を無駄にするような「失敗」はしたくないという心理の表れであるとみられます。それに加えて最近は、ただ「失敗をしたくない」にとどまらず、さらに「得られるベネフィットを大きくしたい」という消費行動に発展してきているのではないか、と我々は考えています。

そして2つ目が「投資マインド」の浸透です。
「投資マインド」とは、文字通りの意味としての金融投資や資産運用だけでなく、自分自身の成長や将来のために時間やお金を使おうとする考え方を表現したものです。最近ではNISAなどの制度が広がり、金融投資や資産運用に取り組む人が増えています(図6)。「投資」という言葉が身近になったことで、その言葉の意味を転換した「自分への投資」といった言い方が広がってきているように思われます。例えば先の章で「未来へのベネフィット期待」事例として紹介した「美容投資」のほか、最近SNSやファッション系記事でよく見かける「投資バッグ」「投資コスメ」、などなど。
これらが組み合わさった結果、消費の際に「今すぐ得られる満足」だけでなく、「少し先に得られること」まで期待してベネフィットを最大化しようとする消費行動が、「ミライマ消費」なのではないかと考えています。

「ミライマ消費」が広がっていくことで、例えば、朝の時間帯にビジネスチャンスが生まれたり、若い世代向けの新しいニーズが現れたりするかもしれません。また、広告のキャッチコピーも、"未来に期待できるベネフィット"を意識したものの方が、より心に刺さりやすいといった可能性も考えられます。
この点は引き続き検証をしていきたいと考えています。

図6 「今」の消費を楽しむ人、「将来」に投資する人 どちらも増加傾向(12-69才/2019年・2021年・2023年・2025年)

ひと研究所では、引き続き次の生活者の消費動向として、この「ミライマ消費」に注目し、生活者研究を進めていきたいと思います。ぜひご期待ください。

【本記事で紹介したサービス(図1・6)】
・サービス名:ビデオリサーチ「ACR/ex」「MCR/ex
・調査時期:2019年、2021年、2023年、2025年(それぞれ4-6月調査)
・対象地区:7地区計(東京50Km圏+関西+名古屋+北部九州+札幌+仙台+広島)
・ターゲット:男女12-69才、男女12-29才
・調査サンプル数:
12-69才:2019年n=10,814、2021年n=11,631、2023年n=10,926、2025年 n=11,162
12-29才:2019年n=2,644、2021年n=3,036、2023年n=2,741、2025年n=2,903

【ひと研究所「生活者の半歩先の時流探索 生活者サーベイ」調査概要】
調査方法:モニターからの写真提供・インタビューなど
調査対象:モニタリングサーベイモニター(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県中心)
調査期間:2025年6月、10月
調査実施:株式会社 精クリエイティブ

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