「計測(ログ)ベースのブランドリフト調査の仕組み」 今さら聞けない!基本の『キ』

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広告・マーケティング
#デジタル #今さら聞けない!基本の『キ』 #広告 #用語解説
「計測(ログ)ベースのブランドリフト調査の仕組み」 今さら聞けない!基本の『キ』

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日々急速な進化を遂げるデジタルマーケティング業界。
皆さんも、毎日のように各社から発信されるニュースで最新情報をキャッチアップしたり、実務上デジタルマーケティングに関わることも多いかと思います。
このコーナーでは、皆さんがニュースや業務で触れるデジタルマーケティングに関する多くのサービスで 頻繁に目にする・・・けれども、"基本"であるがゆえ、詳しく説明されることが少ない「単語」や「仕組み」について、 初心者にもわかりやすく説明していきます。

冒頭「こんな方にオススメ」.png

重要トピック
※本記事をお読みいただくにあたり、前提知識として先に知っておいたほうがよいトピックを以下にまとめました。
「Cookie」とは?【今さら聞けない!基本の「キ」】
「タグ」とは?【今さら聞けない!基本の「キ」】
デジタル広告の「計測」ってどうやるの?【今さら聞けない!基本の「キ」】

そもそも、ブランドリフト調査とは

ここからは以下のようなシーンがあったと仮定して説明します。

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上記において、「CAR X」の商品名の"認知"を検証する一般的な方法は、「CAR X」の計測ログデータを利用したアンケートの実施です。

たとえば自分のスマホやPC上でバナー広告が表示されたことがある人=「広告接触者」とそうでない人=「非接触者」では、広告で訴求したいことがどのくらい伝わっているのか?を調べたい場合、 広告の接触状況の違いによる広告効果の変化を下記のような比較グラフを用いて確認すると、広告接触者は非接触者の約4倍の認知率スコアを獲得しており、バナー広告の出稿効果が大いにあったことが見て取れます。

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認知以外にも、たとえば「CAR X」のバナー広告で言えば以下のようなことについて、「CAR X」という"ブランド"の評価指標が広告に接触することで"リフト"・・・すなわちスコアアップしたかどうかを確認することが多いです。

【ブランドリフト調査で確認する評価指標例】

■「CAR X」に興味を持ってくれたか?
■「CAR X」のことについて、詳しく調べたり、検索したいと思ったか?
■「CAR X」の試乗予約をしてみたいと思ったか?
■「CAR X」が欲しい(買いたい)と思ったか?

では、ビデオリサーチは、ブランドリフト調査の結果確認に必要な「広告接触者」「非接触者」はどうやって探し出すのでしょうか?ざっくり説明すると、以下のようなイメージです。

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次の章から、順を追って詳しく説明していきます。

【STEP①】 効果を検証したい広告にタグをセットする

まずは、計測したい広告と一緒に計測用のタグ(計測タグ)もセットします。タグは、日本語に言い換えると"命令文"です。計測タグには、
「この広告がどこかのブラウザやアプリで表示されたら、広告計測の管理者に『このブラウザで1回この広告が表示されました』と報告する」
といった内容の"命令"が書かれています。

「CAR X」の例で言うと、ブランドリフト調査を行うのはビデオリサーチなので、ビデオリサーチが広告の各配信事業者に依頼して、「CAR X」の広告が配信される際には広告計測用のタグも一緒に送信されるよう、セッティングしておいてもらいます。

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【STEP②】 広告が表示(クリック)された情報を蓄積する

たとえば、りさ子さんという女性が自宅のPCでインターネットを閲覧している際に「CAR X」の広告が表示されたとします。このとき、りさ子さんの自宅PCブラウザは、計測タグの"命令"内容に従い、広告計測の管理者であるビデオリサーチに対し
「このブラウザで、御社のタグの入った広告が1回表示されましたよ」
という報告をCookieを用いて実施します。

Cookieは、ブラウザ単位で広告がいつ・何回表示されたか?を管理する"訪問管理表"のようなものです。りさ子さんの自宅PCブラウザは、ビデオリサーチのタグに関するCookie=訪問管理表を作成し、ビデオリサーチに渡します
そしてまた再び、りさ子さんの自宅PCブラウザに「CAR X」の広告が表示された際には、この"訪問管理表"をブラウザ側で更新し、ビデオリサーチにまた送り返す・・・を繰り返します。

ビデオリサーチ側では、「CAR X」の広告が表示された他のブラウザからも同様に"訪問管理表"をたくさんもらうので、それぞれの"訪問管理表"に任意のIDCookieIDを振ります
そして、りさ子さんの自宅PCブラウザとの通信記録=アクセスログにもCookieIDを付与してデータベース化し、管理します。

ここでポイントとなるのは2つです。

<ブラウザが発行するCookie(訪問管理表)の「管理単位」>

ブラウザが発行するCookieの管理は、広告や配信事業者ごとではなく、計測タグのブランドごとに行います。 「CAR X」の例で言うとビデオリサーチのタグを管理単位とするので、仮に「CAR X」の広告クリエイティブが複数種類あったとしても、広告にセットしたタグが同じビデオリサーチのタグなのであれば同じ1つのCookie(訪問管理表)で管理します。

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<企業側でのデータ蓄積方法>

少しややこしい話になりますが、この例でビデオリサーチがデータベース化し、管理するのはりさ子さんの自宅PCブラウザとの通信記録=アクセスログです。 アクセスログは、ビデオリサーチとりさ子さんの自宅PCブラウザでの広告やWebページのやり取りした記録を残した短い文章のようなもので、Cookieとは異なります。

データベースで管理を行うときは、Cookieそのものではなく、アクセスログを使いCookieには書き込まれていない接触したコンテンツの情報やブラウザやデバイスの情報も取得するようにしています。

※「データベース管理する際にはCookieを企業が保管している」と勘違いしている方も多いです。デジタル広告についてCookie関連の会話をする際には、それが「Cookie」のことなのか「Cookieに振ったCookieID」のことなのかが明確に言い分けられないままに進むことも多いため、注意が必要です。

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【STEP③】 調査パネルとつきあわせる

ここからは最後の仕上げです。

その前に少し、「調査パネル」についてお話しします。
当社:ビデオリサーチをはじめとする各種調査会社は、「調査パネル」と呼ばれるアンケートに答えていただくためのモニター組織を保有しています。
この組織は、「私、モニターになりたいです」と希望した一般生活者の方々の協力で成り立っています。そして、モニターになった方たちには、インターネット上のモニター会員ページを通して、アンケートに回答いただきます。

そこで、多くの調査会社では、モニター会員ページなど多くのモニターが閲覧するウェブページ(またはアプリ)に常時計測タグを設置し、モニターの皆さんがそのページにアクセスした際に計測タグによりCookieIDを取得・管理する仕組みをとっています。(※)

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※当社をはじめ、通常、各調査会社は自社のプライバシーポリシーにおいて、「どのような情報を取得するか」「取得した情報の利用目的」を明示しつつ、その中で取得したCookie(CookieID)をどのように取り扱うかも明示しています。 また、モニター会員ページ上で自分のCookie(CookieID)がこのように利用されることを好まないモニターの方向けに「このような利用を許可しない」(オプトアウトと呼ばれます)という設定を行うこともできる仕様をとっています。

このときポイントとなるのは、1人のモニターから取得するCookie(CookieID)の数は1つとは限らない・・・という点です。

<Cookieが複数になるパターンその1:ブラウザの数>

現代においては、1人でいくつものデバイスを普段使いしている人がほとんどです。となると、デバイスが複数あるということは、その人が普段使いするブラウザも複数存在するということです。たとえば下記の図の場合、りさ子さん1人で使っているブラウザの数は全部で2つあります。 調査会社が管理するCookieIDは、りさ子さんがPCからアクセスした場合はPCのブラウザのCookieIDを/スマホからアクセスした場合はスマホのブラウザのCookieIDの両方を「りさ子さんに関するCookieID」として複数保有しています。

<Cookieが複数になるパターンその2:タグの種類>

また、調査会社によっては、自社で使用する計測タグの種類(ブランド)を複数持ち、使い分けている場合があります。 【STEP②】で述べたとおり、Cookie(訪問管理表)は計測タグごとに発行されるので、たとえば下記の図のように計測タグ「A」「B」「C」の3種類を使い分けている場合は、予めモニターが閲覧するページに計測タグ「A」「B」「C」の3種類をすべて埋め込んでおき、どの計測タグを使うことになった場合でも対応できるようにしています。

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この、常時取得・管理しているモニターのCookieIDデータベースと、【STEP②】で取得した「CAR X」の広告が表示されたCookieIDデータベースをつきあわせます。
つまり、2つのデータベースの中で、
■CookieID(任意の識別用ID) および
■タグの"ブランド"
両方が合致しているものを探し、一致したCookieIDを保有しているモニターが、「広告接触者」と判別できます。

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こうして、はれてりさ子さんが「広告接触者」であることを判別することができました。
同様の方法で、 【STEP②】で取得した「CAR X」の広告が表示されたCookieデータベースと調査パネルをつきあわせて「広告接触者」を抽出します。裏を返すと、両者をつきあわせた結果、合致しなかった調査パネル側のモニターは広告の「非接触者」と判別できます。

【STEP④】つきあわせ結果をもとに、アンケート調査を実施する

【STEP③】で調査パネル内のモニターを「広告接触者」と「非接触者」に仕分けが終わったら、あとは通常のインターネットアンケート同様です。
モニターにアンケートへの回答を依頼し、アンケート結果を集計した結果、「CAR X」の広告効果がどの程度だったのか=ブランドリフト値を確認することができます。

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いかがでしたか?
通常のインターネットアンケート調査は【STEP④】からはじまりますが、広告の計測ログデータを利用してブランドリフト調査を行うためには【STEP①】〜【STEP③】が必要となり、 「広告接触者」を探し出すまでに、非常に長い道のりが発生すると感じた方も多いのではないでしょうか。

実際、事前に関係者同士がしっかりと時間を掛けて認識をすりあわせておかないと、この長いステップを経る中でトラブルや誤算が発生してしまうことがあります。 今後、業務でブランドリフト調査に何らかの形で携わる機会がある方は、調査をスムーズに実施し、必要な調査結果を的確に導き出すためにも、各STEPの仕組みをしっかりと理解しておくことが肝要です。 不明点があれば、事前に確認し、疑問をつぶしておくようにしましょう。

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