【ラジオレコメンダー" やきそばかおる "の I love RADIO】東京の"お笑い"を20年間支えてきた情熱のエピソード~株式会社K-PRO代表 児島気奈さん~

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【ラジオレコメンダー" やきそばかおる "の I love RADIO】東京の"お笑い"を20年間支えてきた情熱のエピソード~株式会社K-PRO代表 児島気奈さん~

ラジオ レコメンダー" やきそばかおる "の I love RADIO  第74回


ここ数年、若手の芸人の活躍が目覚ましく、芸人のラジオ番組やポッドキャスト番組が続々と登場しています。そこで、お笑いライブ制作会社 K-PROの代表で、年間で1300ものお笑いライブを手がける児島気奈さんに、主に東京のお笑い事情についてお聞きしました。

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●児島気奈(こじま きな)・プロフィール

東京都出身。2004年、お笑いライブを制作する団体、K-PROを立ち上げる。代表としてお笑いライブを企画・主催し、所属芸人のマネジメント業務なども行っている。2021年4月には劇場「西新宿ナルゲキ」をオープン、連日ライブを開催し、若手芸人が出られる舞台を運営。2024年5月に旗揚げ20周年を迎える。

著書に『笑って稼ぐ仕事術 お笑いライブ制作K-PROの流儀』(文藝春秋)、『芸人沼から抜けられない。』(ポプラ社)がある。

芸人の出演番組を片っ端から録画

言うまでもなく、児島さんは子どもの頃からお笑いが大好きでした。

特に、お笑いが大好きな父の影響を受けたそうです。児島さんは家にあるビデオデッキ5台をフルに活用して、バラエティ番組を片っ端から録画して観ていたとか。

バラエティ番組のみならず、芸人がドラマに少しでも出演すると分かれば録画して、どんな風に出ていたかチェックしていたほどでした。

やきそば 「芸人が好き」という人は多いですが、児島さんの好き具合は次元が違いますね(笑)。

児島さん 私にとっては本に書いたことも含めて自然なことなんです(笑)。あるドラマにノンキーズさん※ が一瞬だけ映る場面があるんですけど、そういうのも録画してあります。録画した番組はダビングして、さらに編集したものが1000本ぐらいあります。

やきそば 1000本!

児島さん ただ、Hi8に録画していて、いまは再生する機械がないので探してるんですよ。

やきそば 児島さんが持っている映像だけでクイズ企画ができそうですね。

※かつて活動していた白川安彦と山崎晋のお笑いコンビ。1992年結成、2002年解散。

そんな児島さん。高校生の時はクラスのなかで少し浮いた存在だったそうです。

児島さん 今は芸人の"推し"を応援する文化がありますが、私が中学生だった頃(90年代前半)は「お笑いが大好き」という中学生の女子はかなり珍しく、私はクラスでも浮いた存在でした。

その後『ボキャブラ天国』(フジテレビ)のお笑いブームが起きて、同級生の女子が「ネプチューン、格好いい!」と言っているのを見て「やっぱりね」「結局、面白い人にたどり着くんだから」と確信しました(笑)。

やきそば 確かに、当時の中学生はどちらかといえばアイドルやバンドを応援している人が多かったかもしれませんね。

学生時代はお笑いに関する情報を細かく知りたがっていた児島さん。関東以外の地域に住んでいる人とも情報の交換をするために、最大で50人と文通をしていた時期もあるそうです。

児島さん 若い方は信じられないかもしれませんが、昔は雑誌に文通の相手を募集するコーナーがあって、住所と名前が書いてありましたよね。それを通じてほかの地域の人と交流をして、録画したビデオテープやラジオ番組を収録したカセットテープ、新聞の記事の切り抜きなどを送りあっていました。

やきそば 情熱ですね!

児島さん 昔はお笑いが好きな人と語り合いたくても、同じ趣味の人と出会うことにもひと手間かかりましたよね。今はSNSですぐに人と繋がれる時代。好きなものが一緒の人と出会った時に語り合う時間を大切にしたいと思います。

やきそば ラジオも自分と同じ番組が好きな人と直接会った時は話が異様に盛り上がります。

児島さん そうですよね。お笑いライブをどんどん観に来ていただいて、もっと日本中のお笑いファン同士でお笑いについて語り合ってもらうのが私の理想です。

企画の基準

やきそば 児島さんは年間に1300ものお笑いライブの企画に携わっていて、さまざまな方面から企画の提案があると思いますが、GOサインを出すかどうかの基準はどういったところにありますか?

児島さん 一番は肌感覚です。お客さんがワクワクする企画かどうか、今だからこそやりたい企画かどうか、などといったことです。ただ、基本的に面白そうだと思ったら前向きに検討して実現させるようにします。「どうしてもやりたい企画がある!」という芸人さんの気持ちは止められないんです(笑)。

やきそば 企画がどんどん生まれてくるのは理想ですね。K-PROの皆さんがキャッチャーとしてきちんと受け止めてくれるから、安心してアイデアを出せるんでしょうね。

児島さん K-PROはスタッフが企画に対して真剣に向き合います。たとえ芸人さんが勢いで考えた企画でも、面白そうだったら検討します。もちろん、私の経験から「ちょっと難しいかも」と思うこともあります。日頃から劇場に立っているからこその判断です。

理想は日々の仕事に舞台の仕事を

やきそば 今はラジオやテレビ、劇場、雑誌以外にネットやSNS配信など、露出する場が増えましたよね。児島さんからご覧になって、理想の露出の仕方を教えてください。

児島さん 売れっ子であればあるほど劇場の舞台に立つことを大切にしている人が多いです。だから、例えば舞台に出演したあとにテレビなどの収録があって、夜に再び舞台に立つ...といった一日になるといいと思います。

やきそば 児島さんの著書でも触れられていましたが、ウエストランドの井口さんも舞台の大切さを唱えてらっしゃいますよね。加えてYouTubeでオリジナルの動画を作っている芸人も多くて、ブランディングがとても大事になっていますね。

児島さん メディア別の露出法を考えて、自分たちをプロデュースできる芸人の皆さんは強いです。自分たちで企画して「こんな才能もあったんだ」と思ってもらえるようになったのは大きいですよね。

やきそば 今は楽しむ側の目移りが激しくて、芸人さんも裏で支える人も本当に大変なのを感じます。

児島さん 「絶対にこのコンビ(人)は売れてほしい」と心から願って、同じベクトルで動いてくれる人(マネージャーなど)の存在は大きいと思います。個人事務所のさらば青春の光さんやラランドさんは、まさに同じ方向に向かって二人三脚で支える人の存在があって、コンビが大きくなっていくのを目の当たりにしました。

やきそば 児島さんの著書『芸人沼から抜けられない。』では、モグライダーの芝(大輔)さんがブレイクする前に、三四郎の小宮(浩信)さんが児島さんに芝さんの面白さを伝えていたことが書かれてありましたが、やっぱり面白い人は人をよく見てますよね。

児島さん 芸人さんはもちろん、舞台をよく観に来ているお客さんもそうです。面白さに気付く嗅覚とスピード感がすごいです。

面白い芸人さんを見つけたら、まわりの人に発信してほしいという思いがあります。なかにはものすごく細かいところまで分析するファンがいて、「そこまで分析されたら恥ずかしい」という人もいらっしゃいますが(笑)。

東京のお笑いの話をもっと書きたい

児島さんは『大竹まこと ゴールデンラジオ!』(文化放送 2023年11月15日放送)にゲスト出演しました。児島さんはシティボーイズの大ファンでもあります。この日も芸人の魅力を発信する話になりました。

児島さん 大竹さんに「私は東京の"お笑い"にまつわる話をもっとたくさん聞いて、残していきたいです」というお話をしたところ、大竹さんは「そうなんだよ。"東京のお笑い"というのがあるんだよ」と大きく頷いてくださいました。私は改めて「その役割をきちんと果たしたい」と思いました。

やきそば 『芸人沼から抜けられない。』にはK-PROのライブを支えてきた24組の芸人の魅力が愛溢れる文章で語られているのも印象的でした。

児島さん 掲載したエピソードはほんの一部です。ほかにも紹介したい芸人さんやエピソードは山ほどあります。書いて残すことは私の使命のひとつだと感じています。

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自信が笑いに繋がる

やきそば 最近は「タイパ」(タイムパフォーマンス)が叫ばれるなかで、人気ランキングの上位に入ったものや、何かでおすすめされたものだけに触れる人が多いのを感じています。

そんな世の中において、児島さんの話はとても納得するものがあります。20年にわたって舞台を見守っている付加価値がどんどん上がっていくといいましょうか。

児島さん 人にすすめる以上、自分できちんと見てコメントできないといけないと思っています。ただ、これはちょっと意地悪な目線ではありますが、ウケなかった芸人さんがいたとしても、いつしか大いに笑いをとれるようになっていく過程を見られるのも楽しいです。

やきそば 初めはなかなかウケなかった芸人さんも、何かがきっかけとなって爆発的にウケ始めることもありますよね。

児島さん K-PROライブの常連芸人さんに「青色1号」というトリオがいるんですが、出始めの頃、メンバーのひとりの仮屋(想)くんという物静かで雰囲気は良いけど、イマイチキャラクターの掴みどころがない人がいたんです。

仮屋くんがあるライブでギャグのナンバーワンを決めるコーナーに出た時に、ナンバーワンになったんです。「そんな武器もってたの⁈」と驚きました。それからはどんなギャグをやっても安心してウケるようになったんです。そういう場を目の当たりにできるのも劇場の醍醐味です。

やきそば 素敵ですね〜。児島さんはきちんと見ているのがすごいですよ。これはラジオ番組もそうなんですけど。いろいろな番組を聴いて、なぜ面白いのか。イマイチだとしたら、なぜそう思うのか。改良点はどこにあるのかを自分なりに考えることが大事ですよね。

先輩芸人のさりげないサービス精神

やきそば 全体を見る感覚ってすごく大事で、児島さんの著書のなかで、アルコ&ピースの平子(祐希)さんが、舞台のエンディングの告知などの時に、特に告知することもなく大人しくしている芸人の背中をあえて押して、その人に注目を集めて面白くさせる話、すごくいい話でした。

児島さん 平子さんは、お客さんが誰を観に来ていて、何を求めているのか、といったことを敏感に感じ取るサービス精神をお持ちです。

後輩思いで、舞台のトークコーナーやエンディングで、いろいろな人をさりげなく前に出してくれます。そうした場面を目の前で見られるのが舞台の魅力です。それに、裏まわしができる人は貴重な存在なんです。

やきそば 確かにそうですね!

児島さん ウエストランドの井口くんも裏まわしができます。先輩によくしてもらった経験のある芸人さんは後輩に恩送りしています。

やきそば お笑いライブは、キャリアや知名度の異なる複数のコンビ(ピン含めて)が出ることで、さまざまなファンが観に来るのも良いですよね。

児島さん ウエストランドの井口くんが、どんなに忙しくなっても舞台に出続けることの大切さを唱えています。有名になった人が忙しい合間を縫って舞台に出てくれるのが、とても良い流れを生みます。

有名な芸人さんがお客さんを連れてきてくれるし、新人が出た時にたくさんのお客さんの前でネタが披露できて、ウケれば自信がつくし、お客さんもファンになってくれるかもしれません。新人にとって、ほかの人たちを目当てに見に来た人を笑わせるのは快感なんです。

やきそば あと、ここ数年は特に新しい人を発掘する動きがありますよね。大阪のABCラジオに上ノ薗(公秀)さんというプロデューサーがいらっしゃって、足繁く関西の劇場に通ってらっしゃいます。

霜降り明星の面白さにいち早く気付いて『霜降り明星のだましうち!』(土曜 25時〜26時)を立ち上げたり、ミルクボーイ※2 や街裏ぴんく※3 にも早くから注目して番組を立ち上げたあとブレイクしています。

※2 特別番組『ミルクボーイのプロテインラジオ』を経て『ミルクボーイの煩悩の塊』(月曜 24時30分〜25時30分)を放送中。

※3 2023年秋にABCラジオで特別番組『街裏ぴんくのラジオ漫談ショー』を放送。

児島さん K-PROライブにもメディアの関係者がたくさん観に来てくださいます。新世代のスターを生みだそうという雰囲気があります。

チャレンジ精神を持ち続けること

やきそば 児島さんの著書を読んだり、お話を聞いたりしていて、児島さんはお笑いや舞台に関する問題の察知能力がとても高いのではないか、と思いました。

児島さん K-PROが主催するライブはこのままでいいのだろうか、という思いは持ち続けています。実際にうまくいかないことがあって悔しい思いをすることもあるし、負けたくない気持ちも強いです。ありがたいことに、このところK-PROが注目していただけるようになったからこそ、チャレンジ精神は持ち続けないといけません。

やきそば K-PROを運営していくにあたり、フォークダンスDE成子坂の村田渚さんのアドバイスに大いに影響を受けたそうですね(『芸人沼から抜けられない。』参照)。

児島さん 昔、渚さんに「もっと大きな箱(劇場)でやらないとダメだ」と言われました。渚さんからいただいたアドバイスはK-PROに付加価値を付けることを考えるきっかけになり、ひとつのターニングポイントになりました。自分がやっていることをどんなにアピールしても、世界は広がりませんからね。

ジェネレーションギャップについて

やきそば 児島さんはK-PROのスタッフと接している時も気を遣ってらっしゃいますよね。『アメトーーク!』のプロデューサー、加地(倫三)さんとの対談で、若い世代の人(芸人、スタッフ)との距離感をどうするか、という話になっていて、頷きながら読みました。

児島さん ジェネレーションギャップは感じます。

例えばお笑いライブの構成の説明をする時に「ここは、『笑っていいとも!』のエンディングで告知をしに来たゲストみたいな雰囲気で」と言っても若い人のなかには『笑っていいとも!』(2014年放送終了)にピンとこない人もいるわけです。

ただ、若い芸人やスタッフの感性はとても大事なので、お節介にならないように心がけています。

加地さんもずっと現場に出ているからこそ分かる感覚があって、とても共感するところが多かったです。「最近の芸人さんは声が小さいですよね」という話で共感しあったりとか(笑)。

やきそば 肌感覚で話せるのは大事ですよね。

児島さん 現場に興味がなくなったら終わりだという気持ちも共通していたのが嬉しかったです。私は劇場が大好きで、芸人さんが舞台袖で控えている時の気合いの入った表情も好きなんです。20年間、見続けてこられただけでも本当に幸せです!

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やきそば 児島さんに「ネタのアドバイス」を求めてくる人はいませんか?

児島さん 結構多いです。ただ、私がネタそのものに対してアドバイスすることはありません。ライブのトークパートでの立ち振る舞いに関してなど、ネタ以外の部分で助言することはあります。

やきそば 現在、K-PROには所属芸人が51組いるそうですが、そのなかでライブに出てもらう芸人の基準は?

児島さん 基本的に自分の目で見て面白い人に声をかけます。最近はどうしても現場で見られないこともあるので、ほかの人の意見も参考にします。ただ、養成所を卒業してK-PROの門を叩く人も多いので、そのペースに追いつけなくなったら負けだと思っています。これからも自分から面白い芸人さんをどんどん見つけていきます!

やきそば 素敵なお話をありがとうございました。

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(新番組のおしらせ)

2024年4月よりKBS京都ラジオにて『K-PRO produce トッパレディオ!』(土曜 15時〜16時)が始まりました。K-PROとKBS京都ラジオがコラボレーションした番組で、K-PROゆかりの芸人が月替わりでパーソナリティを担当。

さらに、未来のラジオパーソナリティを目指す、K-PRO所属のフレッシュな若手芸人も登場します。4月は児島さんとウエストランドがパーソナリティを担当。

そのほか、若手芸人にスポットをあてた番組を2本ピックアップ。

全国各地のAMラジオ局では『芸人お試しラジオ「デドコロ」』(「地方民間放送共同制作協議会・火曜会」制作)が放送されています。若手芸人が2ヶ月交代で番組を担当。

なかでもおすすめは、これまでに3シーズンを担当している永野さんの回。ラジオが好きな永野さんだからこその、ラジオに対する本音が忖度(そんたく)なく語られます。アーカイブはポッドキャストで配信中。

TBSラジオでは2015年から続く人気番組『マイナビラフターナイト』(金曜 24時〜25時)を放送。公開録音を行い人気投票などから月間チャンピオンを決定。さらに年間チャンピオンに選ばれるとレギュラー番組を持つことができます。

これまでに空気階段、真空ジェシカ、オズワルドなど、今をときめく芸人がチャンピオンに選ばれて冠番組を持ちました。

InterFM897では『MUSIClock with THE FIRST TIMES』(月曜〜木曜 7時〜8時50分)を放送。国立音大卒で、モデルとしても活躍している山崎あみが、やす子、アキラ100%をはじめとした日替わりで出演する芸人と送る音楽番組。

朝の番組とは思えないほどのスタジオの賑やかさです。学校や仕事の前にテンションを上げたい人にもおすすめ。30分バージョン『みゅ〜じっくろっく』もあり、同局(土曜 26時〜26時30分)ほか、各地のFMラジオ局で放送しています。

<了>

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