【ラジオレコメンダー" やきそばかおる "の I love RADIO】鹿児島から世界へ、国境を越えるラジオの魅力~MBCラジオ『青だよ!たくちゃん!』野口たくおさん~

  • 公開日:
メディア
#radiko #やきそばかおる #ラジオ
【ラジオレコメンダー" やきそばかおる "の I love RADIO】鹿児島から世界へ、国境を越えるラジオの魅力~MBCラジオ『青だよ!たくちゃん!』野口たくおさん~

ラジオ レコメンダー" やきそばかおる "の I love RADIO  第75回


今回は鹿児島のMBCラジオで土曜の午後に放送されている人気ワイド番組『青だよ!たくちゃん!』(土曜 13時30分〜16時30分 通称"青たく")に注目。パーソナリティの野口たくおさんに話を伺いました。

野口さんは鹿児島県を拠点に活躍するタレントさんです。『青だよ!たくちゃん!』の4代目のパートナーの上塘(かみとも)百合恵アナウンサーも鹿児島生まれですが、年齢差はおよそ30歳。笑いの絶えない放送は土曜の午後にピッタリで、鹿児島以外の地域のファンも多い番組です。

yakisoba2404_01.jpg

●野口たくお・プロフィール

鹿児島市(日置郡松元町)出身。学生時代に谷村新司がパーソナリティを務める『青春キャンパス』(文化放送)の地元キャンパススタッフに選ばれ、采野吉洋アナウンサーと共に仕事をするようになる。

『青だよ!たくちゃん!』は野口たくおさんの鹿児島の方言が特徴的なワイド番組で、2011年に始まりました。タイトルの「青だよ!」はカレンダーで土曜が青色で書かれていることに起因します。

地域の情報、ラジオカー(ポニー号)の中継、全国のプロ野球ファンがメールで叱咤激励をおくるコーナー、リスナーからのテーマ投稿など、盛りだくさんの3時間番組です。

番組には変わった風習があります。MBCの本社の前に甲突(こうつき)川が流れており、沿岸の広場にリスナーが遊びにきます。スタジオからは少し離れていますが、野口さんは双眼鏡を使ってリスナーとコミュニケーションを図ります。

yakisoba2404_02.jpg

▲『青だよ!たくちゃん!』上塘百合恵アナウンサーと

やきそば 野口さんはリスナーの顔とラジオネームをよく覚えてらっしゃいますよね。

野口さん 僕は物覚えはよくないんですが、なぜかリスナーのラジオネームだけは覚えてるんです。

やきそば リスナーの皆さんが遊びに来るようになったのはいつ頃からですか?

野口さん 初回の放送からです。ジャイアンツの帽子をかぶった方で、ふと気づいてスタジオから掛け合いをしたのが最初です。その後、何代か世代は変わりましたが、ずっと来ている方もいます。例えばシマチュウさんとか。

やきそば 番組で有名な方ですね!

野口さん ラジコで聴いてくださっている方で、北海道から来てくださった方もいます。

熊本の人吉から新幹線で来てくださった方は、お父様が応援してくださっているとのことでしたが、緊張していたようで、奥様が「私はファンというわけじゃないけど、主人が大ファンなんです。(緊張してないで)何か喋ったら?」と促していました(笑)。

地元の方もたくさん応援してくれて、本当にありがたいです。なかにはスポンサーのお店に行ってくださる方もいらっしゃいます。

やきそば 応援といえば、鹿児島出身の漫画家の西炯子(にし けいこ)先生※1 や、鹿児島にゆかりのある山里亮太さん(南海キャンディーズ)※2 とも繋がりがありますね。

野口さん 西炯子先生は、番組に投稿してくださることがあります。スタジオにお越しくださったこともありました。

やきそば 先生は『青たく』の大ファンで、スタジオにお邪魔するのは畏れ多いと躊躇してらしたのも印象的でした。

野口さん 先生も山里さんも大都会・東京で番組を聴いてくれていることが不思議でなりません。山里さんには誕生日に「おめでとうございます」とメッセージを送ったところ、お忙しいにもかかわらず、すぐに返信をしてくださいました。

山里さんも『青たく』のスタジオに遊びに来たことがありました。2018年に開催された「MBCラジオまつり in かんまちあ」ではゲストとして登場して、会場を大いに沸かせてらっしゃいました。

※1 鹿児島出身の漫画家。『娚(おとこ)の一生』『STAYシリーズ』のほか代表作多数。『青だよ!たくちゃん!』のスタジオに出演するにあたり、先生は「『青たく』のスタジオは聖地だから、出演するなんて畏れ多い」と謙遜していた。

※2 両親は鹿児島出身。ある日ふとラジコをMBCに合わせたことがきっかけで『青たく』にハマる。その後、TBSラジオ『たまむすび』で山里さんが『青たく』の話をしているのを聴いて野口さんはビックリ。2018年3月に赤坂で初対面を果たしたことから交流が始まりました。

鹿児島弁、世界へ

やきそば 野口さんといえば『こげなこっがあいもした!』(火曜・水曜 18時50分〜19時 ※翌週火曜・水曜 13時〜13時10分に再放送あり)もとても良い番組ですよね。かみたつおさんと、みやんじょたけこさんがずっと鹿児島の方言で喋っていて、鹿児島の言葉の意味が分からないのに聴いていて面白いです。

野口さん ありがとうございます。

やきそば 2月に私がTBSラジオの『ONE-J』にゲスト出演して「全国の面白いラジオ番組」を紹介する機会がありまして、『こげなこっがあいもした!』も紹介させていただきました。

その時に声の正体を言っていいものかどうか躊躇した結果、「実はかみたつおさんは、鹿児島で有名な野口たくおさんだという噂があります」と、ボカして紹介しました。

ここだけの話、鹿児島の方はかみたつおさんとみやんじょたけこさんが野口さんと笹田美樹さんだということに気付いている方が多いのではないか、と思いつつ...。

野口さん いや〜、ここだけの話ということにしておきましょう(笑)。でもまさか『こげなこっがあいもした!』がTBSラジオの本仮屋ユイカさんの番組『ONE-J』で紹介されるとは思いもしませんでした。放送されたあと、ものすごい反響でした。しかも、私の名前まで出していただいて(笑)。

やきそば そもそも『こげなこっがあいもした!』が始まった経緯を教えてください。

野口さん もともと『城山スズメ』※3 で放送していたコーナーだったんです。かみたつおは、ある番組で僕がレポートをする時に演じていたキャラクターでした。

僕は2002年から『城山スズメ』のパーソナリティを務めていまして、2005年から一緒に担当した上野知子さんがかみたつおを気に入ってくれていたんです。それで『こげなこっがあいもした!』のコーナーを生放送で始めることになりました。

やきそば 『城山スズメ』のひとつのコーナーだったんですか! しかも生放送で。

野口さん 実は『城山スズメ』はそうした独立したコーナーがなかったので、とても珍しいことだったんです。

だから『城山スズメ』のファンの皆さんのなかには違和感を抱いた人もいたと思いますし、僕もすぐに終わるんじゃないかと思っていました。

僕が番組を卒業する時に当時の編成の方から「面白いから独立した番組にしよう」ということで10分番組になったのですが、まさか19年も続くなんて思ってもいませんでした。

やきそば 良い話ですね! しかもポッドキャストだと海外にいる人も聴けますからね。

野口さん カナダやスペインから聴いている方もいます。正直に言えばカナダから聴いている人は僕の後輩だということは分かってるんですけど、スペインで聴いている人はどんな人なのか、謎です(笑)。

やきそば 鹿児島の方言が懐かしいのかもしれませんね。

野口さん 僕はほかの県に行くとその地域で活躍しているタレントさんのラジオ番組を聴きます。すると、何を言っているのか分かりません(笑)。でもそこがまた良かったりもします。

やきそば 沖縄の民謡の番組とかは、意味はあまり分からなくても、聴いていて心地良いから素敵ですよね。

※3 MBCラジオ開局日(昭和28年10月10日)以来続く、人気午後ワイド。現在は月曜〜木曜は采野吉洋、笹田美樹。金曜は岩﨑弘志、小野鼓太郎が担当。

思い出を作り続けて30年以上

そんな野口さんをラジオ・テレビの世界に導いたのは"うね神様"こと采野吉洋アナウンサーでした。現在は平日の人気ワイド番組『城山スズメ』(月曜〜金曜 13時30分〜16時40分)の月曜から木曜のパーソナリティを務めています。

野口さんは采野さんがパーソナリティを務めていたラジオ番組『アニメでGo!Go!』にハマったのち、谷村新司さんがパーソナリティを務めていた『青春キャンパス』(文化放送)の鹿児島地区のキャンパススタッフに応募。

オーディションで2回落ちたものの3回目で合格しました。『青春キャンパス』でMBCラジオのキャンパスリーダーを務めていたのが采野さんでした。その後、采野さんの誘いでMBCの番組に出演することになり、現在に至ります。

やきそば 采野さんにかけていただいた言葉で印象に残っている内容はありますか?

野口さん 「思い出作りに番組に出てみたら? 思い出ができたら辞めていいから」と言われました。思い出を作り続けて30年以上です。まだ思い出ができている途中なので辞める気はありません(笑)。

やきそば 「辞めていい」というのはこの世界の厳しさと、他にあう仕事があったらそっちにいったほうがいいということを表してるんでしょうね。

野口さん 多分そうだと思います。当時、僕は20歳でしたし。ほかに、時間をきちんと守ることや、失敗をした時に頭を下げる大切さも教わりました。

活躍の秘訣

やきそば 鹿児島でたくさんのタレントが活動してらっしゃるなかで、野口さんは長きにわたって第一線で活躍されていますが、長く活動を続ける秘訣はありますか?

野口さん 腰を低くすることですね。偉そうにしないというのは常に心がけています。

以前、タモリさんが「MCは賢くないほうがいい」といったことをインタビューか何かで仰っているのを読んで、私も威張らないように心掛けています。私はもともと賢くないので、それは助かってます(笑)。あとは鹿児島の風土が合ってるんでしょうね。

波風が立つくらいのほうがいい

やきそば 野口さんの肌感覚で、調子が良い番組と、まだまだこれから...と思う番組と、分かりますか?

野口さん 波風が立つかどうかです。不思議なことに波風が立たない番組は、あまり聴いてもらえていないことが多いです。迷惑をかけるのはいけませんが、立ち上げたあとに2〜3回怒られるくらいのほうが長く続くんです。

昼間からおじさんふたりが大はしゃぎ

4月からは新たに『しげちゃん・たくPのチェストいけ! オンジョ!!』(月曜 13時〜13時10分)もスタートしました。鹿児島の言葉で「チェストいけ!」は「それいけ!」、「オンジョ」は「おじさん」という意味です。パートナーは鹿児島のタレント、よし俣とよしげさん。

yakisoba2404_03.jpg

テレビ、ラジオ、インターネットと「Z世代」が重視される中、40代、50代、60代、の"ジャッド世代"の皆様と昭和・平成の昔話や音楽で盛り上がる「中高年向けノスタルジック前向き番組」です。

タイトルは野口さんがこの仕事を始めた20歳の頃に采野さんと担当した『チェストいけ! ヤング』をモチーフにしています。

やきそば こないだの放送では中森明菜のイントロクイズで盛り上がっていましたが、曲が当たった時の商品が"おつまみ"だったのが、なんとも微笑ましかったです。

野口さん 予算がないこともありますが、おつまみがもらえるだけでも盛り上がります(笑)。

もともとこの番組は昨年に2時間特番として桂竹丸さんとよし俣とよしげさんの3人で放送しました。おかげさまで、レギュラー番組になりました。単に懐かしい話でジャレあいたいだけなんですよ(笑)。

そうそう、こないだ西炯子先生が「先日放送された、ジャッキー・チェンの話がとても面白かったです!」と早速メッセージを送ってくれました。

やきそば さすが、西先生! ちなみに、この番組のディレクターは20代の上塘百合恵アナウンサーなんですよね。

野口さん そうなんです。"ローカル局あるある"のひとつだと思いますが、『青だよ!たくちゃん』のパートナーも務めている上塘アナウンサーがこの番組ではディレクターも務めています。

20代なので1980〜90年代のことは知りません。収録の時にキョトンとした表情をしていることもあります。ただ、万が一、僕らが今の時代に合わない、不適切な発言をしたら上塘さんの編集でバッサリと切られます。

やきそば ある意味、守り神みたいな存在ですね(笑)。『不適切にもほどがある!』(TBS)が放送されてから、昭和と今とのギャップの話題がしやすくなりましたよね。

野口さん そうなんですよ。最近、昔の話がしにくい風潮がありましたが、昭和生まれにとってはもっと昭和のアイドルやアニメの話、昭和の文化の話もたくさんしたいですよね。

こないだの放送では昭和の飲み会を振り返ってドラマで再現しました。昭和の時代にはよくあった光景も今になってみるとかなり変わってますからね。

やきそば 映像がないぶん、遊べるのも良いですね。

野口さん 昔放送していた『チェストいけ! ヤング』では音を使った遊びをよくやっていました。想像力をかきたてるような企画もやりたいです。

いずれはMBCラジオが誇る学生向け番組『てゲてゲハイスクール→ハウス』の大型イベント「てゲてゲハイスクールフェスティバル」※4 の『チェストいけ! オンジョ!!』版の音楽イベントもやりたいです。

※4 鹿児島県内の高校生による高校生のための高校生応援イベント。ダンス、お笑い、音楽など高校生のステージに、高校生プロデュースの加工品の販売や体験ブースも登場。2024年までに9回行われている。

MBCラジオの魅力

やきそば MBCラジオは定期的に実験的な企画の特番を放送していて、フットワークの軽さを感じます。常に企画の種を探しているといいましょうか。

野口さん 楽しい番組を作ろうという気運をとても感じます。しかも柔軟な考えを持っている方が多いです。

ラジオが好きな人たちが年齢を重ねて、また新たに楽しい番組を立ち上げようとしているほどですからね。若い世代の人たちが50代になっても喋っていたいと思えるような放送をすることは大事だと思うんです。

こないだ、鹿児島のμFMや宮崎で活躍されているDJ POCKYさんとの特番も放送しました。こちらも楽しかったです!!

やきそば 『青だよ!たくちゃん』のインスタグラムでは出演者の皆さんとスタッフの皆さんによるメッセージ動画が公開されていて、雰囲気の良さが伝わってきます。

野口さん 歴代パートナーの美坂理恵さん、山口真奈さん、森万由子さん、上塘さん、おでばい(鹿児島弁で「楽しいおでかけ」のこと)中継の榮德多賀子さん、平山琴実さん、上園歩美さん、スタッフの皆さん、良い人ばかりです。本当にありがたいです。

一粒で二度美味しい新企画

やきそば 『青だよ!たくちゃん!』では4月に「毎日!Many!600」というコーナーが始まりましたよね。オリジナルの文例やことわざ、日常会話を鹿児島弁と英語に訳すコーナーで、大好きな企画です。

野口さん この企画はパートナーの上塘さんの発案なんです。英語の例文に出てくるような言葉を鹿児島の言葉と英語で話せたら面白いんじゃないかと。

僕は英語が苦手で、上塘さんはペラペラに話せるのでリスナーさんと一緒に学ぶことができます。しかもこちらのコーナーはポッドキャストだけではなくTikTokでも配信しています。

やきそば 今後も楽しみです。

yakisoba2404_04.jpg

野口さん ラジオは本当に楽しいんです。放送が終わったあとで番組を聴き直すと「もっとこうすればよかった」と、眠れなくなる時があります。

自分が納得するような、満点の放送をするのはとても難しいです。そこがラジオの怖いところではありますが、放送で喋っていると「ラジオがあって、たくさんの方に楽しんでもらえて良かった」と思います。

ラジオはラジコの出現によってもう一度盛り上がってきています。テレビにはテレビの楽しさがあって、ラジオにはラジオの楽しさがあります。この気流に乗って、これからも面白い番組を作っていきます!


ここからは方言が感じられる番組の中から紹介します。

山形のYBCラジオでは『山口岩男の方言Rock Hour⭐︎』(木曜 16時20分〜16時50分)を放送。山口さんは山形出身。早稲田大学中退後の1989年レコード会社に送ったデモテープがきっかけで日本コロムビアよりメジャーデビュー。

ウクレレ奏者としては、ハーブ・オオタ、ジェイク・シマブクロなどとも共演しています。2018年には山形弁を後世に伝えるためにつくったラップ「かえずのながさはえずばへっで」が山形県内で大ヒットしました。

ちなみにYBCラジオでは山形弁で歌う『タッチ』が話題となったシンガーソングライター、朝倉さやの番組『朝倉さやのモウバンゲダドリャ!』(水曜 16時20分〜16時50分)や、山形出身のトモさんが出る番組『テツandトモのなんでだラジオ!』(金曜 16時20分〜16時50分)など、山形にゆかりのある著名人の番組も多数放送しています。

ぎふチャンラジオでは『カンちゃん、ノンちゃんのラジオ岐阜弁まるけ』(日曜 17時30分~18時)を放送しています。「まるけ」は「~だらけ」の意味。岐阜弁を中心に方言の話題を取り上げ、地域の面白さ、楽しさを見直す番組です。

パーソナリティは神田卓朗さん(「ぎふチャン」元アナウンサー)と椿亭半笑さん。岐阜の方言は特徴が多く、例えば「おそがい」(怖い)、「まわし」(準備)、「勘考する」(考える)といった具合です。岐阜の方言が好きになる30分です。

沖縄のRBCiラジオ『多良川 おもしろ文化講座 一言葉(ちゅくとぅば)二言葉(たくとぅば)島言葉(しまくとぅば)』(月曜〜金曜 18時15分〜20分)は沖縄の方言や文化を紹介する番組です。

出演は俳優、演出家で同局の『民謡で今日拝なびら』に57年にわたって出演した八木政男。アシスタントの仲村美涼さんとの掛け合いが微笑ましいです。

ほかにもROKラジオ沖縄では吉田安敬・盛和子による民謡リクエスト番組『暁で〜びる』(月曜〜土曜 5時〜6時50分)を放送しています。ゆったりとした時の流れを感じる番組で、朝の気持ちを整えてくれます。

<了>

関連記事