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メディア
2023年01月12日

期待しつづけるテレビCMの価値と、その先【VR FORUM 2022 レポート】

VR Digest編集部
VR Digest編集部

期待しつづけるテレビCMの価値と、その先【VR FORUM 2022 レポート】

[登壇者](右から)
株式会社TBSテレビ 営業局営業推進センター営業推進部 塩川 満樹 氏
エイベックス・エンタテインメント株式会社 執行役員 レーベル事業本部 レーベルヘッド 小井口 悠 氏
株式会社ビデオリサーチ 企画推進ユニットPFビジネス推進グループ プランナー 寺本 花菜子

ネット配信やサブスクリプションの浸透など、取り巻く環境が大きく変化している音楽業界とテレビ業界。そんななか、テレビCMにおけるイメージや評価、ニーズはどのように変化しているのでしょうか。今回は「Smart Ad Sales」(スマートアドセールス/SAS)をはじめとした放送局の取り組みをたどりながら、広告主のご意見も交えつつ、テレビCMの価値と今後の発展性を議論します。

【もくじ】

■ 変化する音楽業界のビジネスモデル 収益チャンスが増えると同時に「可処分時間の奪い合い」に
■ オンラインで狙いきれないリーチをテレビCMで補完。重要なのは「CMと番組の親和性」
■「コンテキストマッチング」が持つ効果と、CM内容と"相性のよい"番組へ出稿が可能なSmart Ad Sales
■ 実際、テレビの価値は「変化」しているのか?
■ 今後のテレビメディアに期待するのは「ユーザビリティと広告機能の向上」

■ 変化する音楽業界のビジネスモデル 収益チャンスが増えると同時に「可処分時間の奪い合い」に

まずエイベックス・エンタテインメントの小井口氏が、音楽市場における収益構造の変化について解説。日本レコード協会の調査では、音楽CDなどパッケージ販売による収益は減少し続ける一方、ストリーミング配信における収益は2015年より右肩上がりの状態が継続するなど、デジタル化の波がますます高まりを見せています。
「音楽ビジネスのデジタル化はユーザーにとって『選択肢が増えた』状態」と小井口氏。「ストリーミングの加速は音楽業界に大きなプラスを与えている」とし、「今後もさらにその流れは加速していく」と語ります。

「これまでのパッケージ販売では購入された時点にのみ収益が生まれていた。しかし今は"曲が聴かれた"タイミングでも収益が発生する」と、その収益構造に大きな変化が訪れているといいます。

「ストリーミング・ダウンロードコンテンツ含め、いまは極端な話"お金を出せばあらゆるコンテンツが買える"状況。しかし、それらを楽しめる時間は有限です。ユーザーの財布のお金に加え、今はユーザーの可処分時間の奪い合いがマーケットで重要な要素を占めています」(小井口氏)

レコード会社としての音楽ビジネスの変化 ~収益構造・ビジネスモデルの変化

そうした変化により、プロモーション戦略において3つの変化が生じていると小井口氏は続けます。
1つは周囲を取り巻くメディアやソーシャルネットワーク、コンテンツなどの"影響力"の変化。2つ目に収益構造の変化により長期化したプロモーションなど"期間"の変化。

3つ目に、"宣伝コスト領域"の変化を挙げ、長期化するプロモーションに伴い、広告物でもあり収益も生むデジタルコンテンツのクリエイティブ量が増加、その結果、「制作費と宣伝費を分けて考えることに意味が無くなってきている」と小井口氏。それに伴い、広告出稿プランに変化が起きています。

■ オンラインで狙いきれないリーチをテレビCMで補完。重要なのは「CMと番組の親和性」

私たちを取り巻くコンテンツは増加の一途、もちろん音楽コンテンツも例外ではありません。
「動画配信プラットフォームやSNSなど音楽コンテンツは膨大化している。その中で、楽曲をどうやって見つけてもらうかが重要」と小井口氏は語ります。

小井口氏曰く、パッケージ発売のタイミングに告知広告を打っていただけの時代は過ぎ、現在はSNS広告やYouTube、TikTokなどへの動画公開など、オンラインやソーシャルメディアを用いたマーケティングが多くなったのが現状です。一方で、その機会を活かして接触を作れるかはアーティストやレーベルの力に依ることもあり、「オンライン上のPRだけでは懸念が残る」という課題も。

ある程度強制的なリーチを図れる、いわゆる"ながら媒体"と言われる媒体に補完を求めるところがある。その部分を現在、テレビCMに期待している」と小井口氏は述べます。
テレビCMでは、商品内容や発売の告知だけでなく、コアファン以外に知らせるべき告知やリーチ・拡散性、他にもそれまでやってきた音源プロモーションとの相乗効果を狙うなど、「目的も変化させなければならないと考えています」。

「なかでも、意識しているのは『CMを打つ番組選び』」と小井口氏。「インパクトや話題性、感情移入を求めてCM1本へのこだわりがある」といい、「出稿の際にはGRPよりも、番組とCMの親和性を狙って活用している」と語ります。

広告出稿プランの変化 ~テレビCMの活用意図

広告出稿プランの変化 ~テレビCMの活用意図

■「コンテキストマッチング」が持つ効果と、CM内容と"相性のよい"番組へ出稿が可能なSmart Ad Sales

音楽業界の環境変化に対応した広告主側としての取り組みを受け、TBSテレビの塩川氏は放送局側の取り組みについて解説。"生ライブ"に特化した『CDTVライブ!ライブ!』、"日本一明るい朝番組"としてC・T層に支持される『ラヴィット!』、単発の特番『音楽の日』『お笑いの日』などTBSの人気番組を紹介。「番組のジャンルを明確にすることで視聴ターゲットを明確にし、視聴者だけでなく広告主にも出稿していただきやすい番組編成をとっている」と語ります。

それに加え、従来のタイム・スポットのみならず、「Smart Ad Sales」という新たなCM枠セールスも開始。「枠ファインダ」というビデオリサーチが開発したシステムサービスを用いて、TBSをはじめとする参加各放送局の枠価格やセールス状況を確認しながら、15秒のCM枠を1本から購入予約申込みすることができます。
枠ファインダの特徴として「視聴率だけでなくターゲットデータを活用した枠の検索が可能」と塩川氏。音楽系で出稿を検討する場合の一例としてes XMPやビデオリサーチのデータで音楽に関心がある層のデータを挙げ、「一番欲しいターゲットはどこを見ているのかなど枠購入の参考にできる」と紹介しました。

枠ファインダとは?

さらにTBS独自の取り組みとして、JNN系列局複数単位で同じ枠をまとめた「同枠セールス」や、火曜ドラマのステブレ枠とTVer出稿のセットセールスなども実施。そのほか、出稿による効果をBefore・After形式で比較できるレポートの提供も可能にすることで、広告主にとっての利便性向上を目指しているといいます。

TBS現在の取り組みの紹介-「火曜ドラマ」地上波×TVerセールスセットPlan

「Smart Ad Sales」について、小井口氏は「確実に番組を選んでCMを打てることが最大のメリット」とコメント。「こだわり抜いた1本のCMの可能性を広げてくれる番組はどこなのかと考え、クリエイティブから出稿計画までを立てている立場からすると、期間や時間帯だけでなく、番組レベルで選んで出稿できることは非常に大きい」と語ります。

「たとえば、番組に出演するタレントがそのままCMに出演していると気持ちの流れがスムーズになる。一方でシリアスなドラマを見ているときに賑やかなCMが流れてくるとギャップを感じる」と寺本。「CM出稿においては、こうした『視聴者の気持ちの流れ』が大事な要素の一つになる」といい、「Smart Ad Salesを用いて、デジタル広告ではすでに定着している『コンテキストマッチ』の概念をテレビCMに持ち込むことができる」と語ります。

「生活者を対象としたビデオリサーチの調査では、番組とCMの相性が良いと『ついついCMを見てしまう』『CMで扱っている商品やサービスを覚えやすい、特徴を理解しやすい』という結果が出ており、番組とCMのコンテキストがマッチすることで広告の効果が高まることを確認できている。番組を1本からピンポイントで購入できるSmart Ad Salesは、こうした面でも活用が期待できます」(寺本)

これを受け、「番組の雰囲気や相性が、CMのクリエイティブやアーティストの人生観と相まっているときには、すごく効果がある」と小井口氏。CMと番組のマッチングを意識し、Smart Ad Salesを用いてピンポイントな枠購入を戦略的に行っている立場として、その効果を語りました。

番組とCMがコンテキストマッチしていると...CMの内容がより伝わりやすくなり広告効果が高まる

■ 実際、テレビの価値は「変化」しているのか?

広告主、放送局ともにテレビCMにおける価値観が変化するなか、媒体としてのテレビの価値は果たしてどのような現在地にあるのでしょうか。寺本はビデオリサーチの生活行動・メディア接触パネル「MCR/ex」から、2021〜2022年における映像コンテンツの視聴時間推移を紹介します。

「『テレビを見なくなったぶん、動画コンテンツに視聴者が流れているのではないか』と思いがち。しかし、そんなことはないということが読み取れる」(寺本)
推移データによれば、2021〜2022年にかけて、テレビの視聴時間は73分から62分へと減少するも、同時に動画の視聴時間も37分から32分へとわずかながら減少。「2022年はコロナ禍の状況変化によって2021年より外に出るようになり、そもそも自宅内でのコンテンツ視聴に割く時間が減った」と寺本。「これによってテレビの視聴も減ったという外的な要因も大きい」と指摘します。

一方、地上波民放に対するイメージとして「情報に信頼性がある」と回答した割合は、2022年には前年比で110.8%の上昇。コロナ禍という未曾有の事態を経て、テレビに対する信頼度がより一層高まっていることが明らかとなりました。

「一概に『テレビ離れ』という言葉が横行しているのはどうかと思う」と小井口氏。同時に、「この高い信頼性をどこまでキープし、伸ばしていけるかがテレビとしての勝負であるように思う」とコメントしました。

良いテレビコンテンツはしっかり視聴率も取れ、ネット配信でも高い再生回数を記録するなど実績がある」と塩川氏。「テレビの広告効果は他媒体に比べてもまだまだ強いということがデータの上でも証明されてきている」としつつ、「放送局としては、より良いコンテンツを作り、しっかり出稿していただける環境を作ることが本当に大事だと思います」と力を込めました。

テレビの価値は変化している?

■ 今後のテレビメディアに期待するのは「ユーザビリティと広告機能の向上」

これらを踏まえ、最後に塩川氏と小井口氏は今後のテレビメディアに対する期待を語ります。

マスとコアの両面で訴求できる広告商品をもっと作っていかなくてはならない。地上波とTVerだけでなく、さらに対象の枠を広げるとともに、『試しにこの枠を使いたい』といったご要望にもすぐお応えできるような柔軟な商品を作る必要があると考えています」(塩川氏)

これに対し、「『とりあえずテレビをつける』というこれまでの行動に代わり、『TikTokを開いてみる』『SNSを眺めてみる』という行動に可処分時間を奪われつつある」と小井口氏。「個人的な意見」と前置きしつつ、「外に持ち出せるデバイスで、どれだけテレビという良質なコンテンツを見ることができるかが肝になっていくのではないか」と語ります。「一番の急務はユーザビリティの部分。『外ではテレビが見られない』と多くの人に思われているのであれば、『どこにいてもテレビコンテンツが楽しめる』ということがもっと伝わらなければならないと思う」

加えて、「ここからさらに同時配信や見逃し配信の環境が整うと、広告出稿することへの意味合いも大きく変わる」とし、「よりテレビCMの効果を感じられるよう、オンライン広告のそれと見劣りしないぐらいレポーティングの精度をさらに上げていただきたいと思います」と期待を込めました。

また、「テレビCM自体が視聴者によって出し分けができる、いわば運用型広告のようになると、テレビメディアに対する広告主の意識は一気に変わるのでは」と語ります。

これを受け、「最終的には、放送局と広告主が手を取り合って良いビジネスを作り出せる方向に行けたら」と寺本。「そこに向けてビデオリサーチもお手伝いをしていきたいと思います」と締めくくりました。

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