【18-22年5年間比較】存在感を増す動画広告、その変遷の歴史を追う〜ユーザー視点での評価は?〜

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広告・マーケティング
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【18-22年5年間比較】存在感を増す動画広告、その変遷の歴史を追う〜ユーザー視点での評価は?〜

【この記事はこんな方にオススメ!】
✅インターネット広告や動画コンテンツ・メディア業界にお勤めの方
✅動画広告の市場規模や市場内での価値に興味をお持ちの方
✅動画広告の制作・出稿を検討している広告主の方

インターネット広告市場は金額規模も、利用量も高止まり傾向

インターネット広告(デジタル広告)業界はここ数年で大きな成長を遂げ、市場規模を広げてきました。その成長がいつまで続くのか気になっている方も多いのではないでしょうか。

CARTA COMMUNICATIONS社が22年8月に発表した2022年上期インターネット広告動向および、これからの広告指標についての調査結果(※1)によると、2022年上期のインターネット広告費は横ばい~減少したとの回答が半数を超え52.2%となったとのこと。
景況感としても、調査開始以降初めて前回調査を下回る結果となりました。

記録的な円安や不安定な社会情勢など、経済成長そのものに対するマイナス要素も影響していると思われますが、インターネット広告市場規模は円熟の域に近づきつつあるようです。

また、金銭的な面だけでなく、一般生活者のインターネット関与という点でも同様の傾向が見られます。
ビデオリサーチで経年取得している、一般生活者のあらゆる動向をまとめた巨大アンケートデータベース「ACR/ex」の22年最新調査結果で18年〜22年のインターネット利用時間量の推移【図1】を見てみたところ、2020年のコロナ禍に激増したインターネット利用時間量が21年、22年と高止まりになっていました。

【図1】
インターネットの利用量はコロナ禍を経て、高止まり

これらの動きは、インターネット広告が広告媒体として一大市場を築いたがゆえに注目されることと言えるでしょう。
では、この一大市場の"中"ではどのような変化が起きているのでしょうか。今回は、近年スポットライトを浴びることが多い「インターネット動画広告(以下、動画広告)」に焦点を当て、18年から22年の5年間という長期スパンの中で動画広告がどのような変化を遂げてきたのか、ユーザー評価の視点からひも解いていきたいと思います。

記事の中でご紹介しているサービスはこちら
【ACR/ex】

ネット広告を出すなら「PCよりスマホ、静止画より動画」は本当か?5年間分検証してみた

前述の巨大データベース「ACR/ex」では、毎年同時期に動画広告、そして静止画広告(※2、以下バナー広告)について、PC(※3)、スマートフォン(以下スマホ)それぞれのデバイスごとに「広告が生活者に与える印象(32項目)」を聴取しています。

そこで、22年の最新調査結果から、32項目の印象のバランスが

・動画広告のほうがより強いのか、バナー広告のほうがより強いのか
・PCで見るときのほうがより強いのか、スマホで見るときのほうがより強いのか

どちらに傾いているか、4象限のマップで表してみたのが以下【図2】です。
(集計ターゲット:関東在住12~69歳男女)

【図2】
生活者が持つ「広告の印象」はスマホ>PCに偏りがち

まずぱっと見で分かるのが、全体的に左に寄っている=スマホ寄りだという点です。
そして、これは意外だと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、上下=広告フォーマットで見てみると、印象項目(水色のドット)は動画・バナー両方に分布が分かれていることも特徴です。

1つ1つの印象項目に目を向けてみると、よりスマホ寄りなのは例えば「商品やサービスへの欲求喚起」「広告の内容をネットで調べる」など、ミッドファネルに位置するものが複数見られます。

そして、より動画寄りなのは「ストレスを感じる」「商品の質感がよくわかる」「商品に対するイメージが広がる」です。2つ目と3つ目に関しては、より多面的・立体的に商品を見せることができる動画広告ならではの印象と言えますが、1つ目に関してはネガティブなものになるため、注意が必要です(詳細は後述)。

さらに、このマップを時系列で比較してみると以下【図3】のようになります。

【図3】
5年間で、広告印象はより左下:スマホ動画広告に寄って来た

非常にわかりやすく、印象項目(水色のドット)の配置が左下:よりスマホに、より動画広告に寄っていることがわかります。

詳しく見ていきましょう。18年時点では大半の印象項目が上側:バナー広告に寄っており、動画広告の印象はまだあまり強く根付いていませんでした。
それがこの5年間で全体的により下側に向かっています。生活者が動画広告を視聴した経験、そしてそこで見た商品やサービスに対し何らかの感情を持ったり、購入などの行動を起こしたりした経験、つまり広告効果が積み重なったことで、動画広告という広告フォーマットの存在感が全体的に増してきたのだと考えられます。

そして、デバイスでいうと18年時点ではPC・スマホどちらともとれる印象項目が多かったのが、22年にはなんと全項目が左側:スマホ寄りになっています。かつてはスマホでのインターネット利用には「ギガの制限」がありましたが、通信技術の発達により今では「ギガの使い放題」が一般化し、スマホでも気軽に動画が視聴できるようになる環境が整ってきたことも、スマホでの動画広告の存在感増につながったのかもしれません。

「スマホで動画広告」、その存在感はよくもわるくも・・・

前章で生活者の中では「スマホでの動画広告」の印象が高まっていることが見えてきたので、今度は「スマホの動画広告」にスポットを当て、その印象が強い項目をランキング化。18年〜22年の5年間で比較【図4】してみました。

【図4】
スマホで見る動画広告の印象は、5年間TOP3がずっと同じ

TOP5つに色をつけていますが、5年間TOP3はまったく変動がなく、4位と5位の順番が入れ替わっているだけだということが分かります。

各印象項目の中身を見ると、2位「発売されたことを知る」はアッパーファネル、3位〜5位の「商品やサービスに興味がわく」「商品・サービスの内容理解」「商品に対するイメージが広がる」はアッパー〜ミドルファネルに効いていると思われるラインナップが並びます。
動画広告が登場した当初は、商品・サービスの認知をよりインパクトを持って広げる広告フォーマットとして普及しましたが、だんだんとミドルファネル、ローワーファネルに活用する企業も増えてきています。その企業側の思惑が、広告の受け手である生活者側にもしっかりと伝わっているといえるのではないでしょうか。

ただ、懸念材料もあります。それは5年間不動の1位となっている「ストレスを感じる」です。
スマホでの動画視聴は、動画が画面を占有して流れるため専念視聴となることが多いです。集中して見る分、その広告の内容が自分にとって興味の薄いものだったり、不快に感じる表示方法だったり・・・という経験が続くと、他の広告フォーマットよりもネガティブな感情を持ちやすくなることも要因の1つとして考えられそうです。

また、広告の視聴頻度という点でも気になる項目の動きがあります。それは21年、22年の10位にランクインしている「ひとつの広告を何度も見聞きする」です。18年は20位だったので、この5年で10つ順位を上げています。プライバシー関連の規制強化により、ブラウザ・アプリともにCookieや広告IDの利用が難しくなっている場合があることも1つの影響要素となっているのかもしれません。
まだ順位はそこまで高くありませんが、今後どのような動きを見せるのか、注視する必要のある印象項目と言えそうです。

もちろん、2位以降は「発売されたことを知る」「商品やサービスに興味がわく」といったポジティブな感情が続きますし、前章でも述べたように生活者の中で「スマホでの動画広告の存在感」が増しているということは事実です。
ですがそうやって存在感が増した分、1回1回の広告体験の"質"もまた、生活者の中で印象に残りやすくなっていることもあわせて認識しておく必要があるでしょう。

おわりに

スマホでの動画広告フォーマットも日々新しいものが生まれており、今後も多様な広告体験が想定されることから、今後も「スマホの動画広告」の存在感は高まり続けるものと想定されます。

年々技術的なコントロールが難しくなっている側面もありますが、クリエイティブの作りこみ方や、生活者に不快に思われない広告フォーマット、そしてフリークエンシーには十分留意し、生活者にスムーズに受け入れてもらえる広告作りが肝要と言えます。

本記事では、12~69歳と幅広い年代での集計結果をご紹介いたしました。
4象限マップや印象ランキングは、「Z世代バージョン」「肉好き」「特定のアプリユーザー」などターゲットを絞った分析も可能です。
ご興味お持ちの方は、こちらよりお気軽にお問合せください。

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【本記事で紹介したサービス】
・サービス名:ビデオリサーチ「ACR/ex
・調査時期:2018年〜2022年の4~6月回(春調査回)
・対象地区:関東

※1:2022年上期インターネット広告市場動向および、これからの広告指標についての調査レポートを発表〜2022年上期のインターネット広告費はやや停滞〜 /株式会社CARTA COMMUNICATIONS
※2:調査内では「インターネット広告(動画広告以外)」として聴取
※3:調査内では「PC、タブレット」として聴取

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