OOH最前線!DOOHの将来性と「トリプルメディアプランニング」の促進【VR FORUM 2022 レポート】

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OOH最前線!DOOHの将来性と「トリプルメディアプランニング」の促進【VR FORUM 2022 レポート】

[登壇者](右から)
株式会社ジェイアール東日本企画 コミュニケーション・プランニング局 プランニング第四部長 エグゼクティブ・ストラテジック・ディレクター 中里 栄悠氏
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ アウトドアメディア局 局長代理/博報堂DYアウトドア取締役執行役員 兼 デジタルプロデュース部長 三浦 暁氏
株式会社LIVE BOARD 代表取締役社長 櫻井 順氏
株式会社ビデオリサーチ メディア・コミュニケーション事業ユニットメディア企画グループ プロデューサー 中山 不尽子

自宅の外で目にするOOH。近年はデジタル化によりサイネージなどのクリエイティブも自由度が高まり、SNSなどで話題を生むこともあります。しかし、その効果については確信が持てないという方もいらっしゃるのではないでしょうか?OOHならではの価値とは何か、それをどう活かすべきなのか。その可能性を探っていくディスカッションを、デジタルOOH・プログラマティックOOH日本最大手の媒体社、企業ROIを包括的に支援する総合広告代理店、首都圏最大の交通媒体を担うマーケティング・ソリューション企業とそれぞれの立場の登壇者を招いて実施しました。

■コンテンツマッチ広告でターゲットを狙い撃ち

OOHはデジタル化により、どのような進化を遂げているのか。まずは、特徴的な4つの事例が株式会社LIVE BOARDの櫻井氏によって紹介されました。1つ目は、1つの素材で各地に配信するネットワーク型のOOHです。映画のキャラクターが突然街中に現れるような演出を複数のロケーションに配信しました。「突然」の演出にはサイネージで普段の外壁を天候や時間のデータに応じて映像化しています。そして、特定の時間に同社の配信システムで一斉に映像を配信。あたかも壁からキャラクターが飛び出るインパクトを醸成するクリエイティブを実現しました。

2つ目は、大手ハンバーガーチェーンの事例。デジタルを用い、街中に動くハンバーガー型のQRコードを露出し、生活者が店舗に足を運ぶ行動を誘引。場所・時間・天候などに応じ、クリエイティブを出し分けて配信した好例でした。「(地域名)でランチ迷子のみなさん!」というように、そのときの通行者の心にささるメッセージを届けることに成功。「事後の調査によると、広告を見た半分近くの方の購買意欲が高まった」と櫻井氏は手応えの実感を語りました。

3つ目は、SNS連動型のOOHです。映画のローンチキャンペーン(グローバル展開)で、配信映像にSNSにアップされた投稿を組み込むという仕掛けになっていました。さらに、OOHのグローバルキャンペーンの場合、今までは各国で枠の買付が必要でした。しかし、デジタルの活用により、DSPを通じてグローバルでの一括した買付・配信・レポーティングが可能になっています。

4つ目は、グローバルIT機器メーカーのターゲティングキャンペーンの事例です。「IT関心者層」というカスタムオーディエンス配信を、デジタルOOHによって実現しました。株式会社LIVE BOARDは、個人情報が保護されているドコモ・データ(位置情報+会員データ)を活用することで、オーディエンスの可視化を可能にしています。同キャンペーンでは、企業のIT関連の意思決定者が参加する展示会などの位置情報にもとづいて、それらの方の出現頻度の高い場所を抽出し、そのエリアのデジタルサイネージに動画広告を配信。その結果、広告接触者のweb上での関心度は、非接触者に比べて平均8.8ポイント高い結果が出ています。

さらに、メディア横断で気候変化対策の訴求、コロナ禍で打撃を受けている飲食店の支援、国連団体への協力、などマーケティング活動以外の公共性・信頼性を基軸とした活動も紹介。

当社の中山は、「SNSを見た人の拡散が止まらない施策」と企画の魅力を言及するとともに、「ターゲティングまでできるのが画期的」と指摘。位置情報のログを活用し、ターゲットに目掛けた配信がOOHで可能になったことは、デジタルOOHの大きな進化です。さらに中山は、位置情報、会員情報、アスキング情報、アプリ利用状況などを組み合わせ、OOHも効果検証できるようになったことにも着目。「大量且つ質の高いデータでPDCAの一元管理が可能になっている」と新たな可能性を語りました。
また、移動者マーケティングに知見が深い中里氏は、「買い物行動の3件に1件は移動中に意思決定をしている。そこで、移動者に着目をし、スマホ・DOOHの普及により、その移動者へのマーケティングがしやすい環境になった」と解説しています。

これらを受け、現在のOOHについて、株式会社博報堂DYメディアパートナーズの三浦氏は4つの観点で変化をまとめています。

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これまで限定的だったデータ活用の範囲が広がりOOHは他メディア(特にテレビ、デジタル)との統合的なプランニングが可能になっています。さらにターゲティングも高度化しており、メジャメントも補足的から、グローバル基準に基づいたメディア取引へと変わってきています。「OOH領域において先進国のイギリスを筆頭に、他諸外国もこの流れにあるため、日本もその方向に進んでいくだろう」と三浦氏は所感を述べました。

■急成長は必然!?若者にも嫌われずにメッセージを届けるマスメディア

新たな可能性が広がっているOOH。セッションでは、今後の展望について意見が交わされました。日本の総広告費におけるOOH(屋外・交通)の割合は約6%で、これは諸外国と同程度とのこと。そして、海外ではデジタルOOH市場は、今後4年間に渡って、毎年約10%という驚異的な成長が続くと予測されています。

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成長予測の要因について、櫻井氏は「OOH市場の成長を、デジタルOOHの成長が支えているというファクト」「動画市場全体の伸びの中で、デジタルOOHも含まれるという期待値」「新興市場におけるデジタルOOH市場の大きな成長への期待値」の3つがあると分析しています。

成長を続けるとされるOOH市場ですが、生活者側からはどのように見えているのか、中山は生活者がOOHにどのような印象を持っているかを示すデータを紹介しました。すると、OOHは「認知」「認知の定着」「興味」に対する効果が、テレビCMに次いですべて2位という好結果(当社ACR/ex調べ)に。それに対して、「約6%しか広告費が割かれないのは、OOHが過小評価されているためでは?」と中山。

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この意見に、株式会社ジェイアール東日本企画の中里氏は強く同意。その根拠として、交通広告について野村総合研究所と共同で調査した結果を示しました。それによると、広告予算別リーチ率のシミュレーションでは、20代〜30代はOOHのリーチ率が、テレビCMやWeb広告をしのぐ場合もあるとのこと。また、テレビやWebなどの他メディアより好意的に受け止められている割合が高く、嫌われずにメッセージを届けられると言います。「強制視認でありながら、見たくなければ見なくていい。生活空間のなかでそっと見せるなら、OOHのよいところでは」と中里氏。それに対し、中山は「安心安全が担保されている公共性が高いクリエイティブは、OOHの信頼度を高めている」という異なる視点からの見解も示しました。

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このほか、OOHはフリークエンシーが非常に多いという結果も。そのため、短期間で強力な瞬間風速を生むことができ、ローンチのタイミングでブースト効果を期待できることがわかりました。中里氏は「街中に大量にOOHが出ることで、"世の中で流行している"と感じてもらえる」と分析します。また、嫌われずに出し続けることができるので、ブランドのKPIを長期的に維持できるという結果も。OOHは「気がついたらブランドが心に残っている(キープ効果)」と中里氏は語ります。

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さらに、同研究では、使用メディアの組み合わせ別の効果も検証。「メディアは同予算であれば、テレビ×WEBよりも、テレビ×WEB×交通の"トリプルメディア"の方が、効果を高めやすい。特に若い世代では、その傾向が顕著」と中里氏は分析しました。

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最後にトリプルメディアの価値について紹介がされました。「生活者のタイムラインをフルカバーし、リーチ拡大」、「重複接触によるクロスメディア効果の創出」、「若者に届きやすい"嫌われない"OOH、効果を底上げ」の3つが、代表的な価値となります。特に、若者・Z世代に対して効果的にアプローチできる貴重なメディアであることもわかりました。

■OOHのアシストで、テレビCM、Web広告の効果もアップ!

これらを踏まえた上で、三者とも意見が一致したのが、OOH、テレビCM、Web広告のトリプルメディアでの展開が、非常に有意なクロスメディア効果を生むことでした。

三浦氏は、「KPI達成に向けてはポートフォリオの最適化が必要。各メディアの強みを補完しあいながら全体のパフォーマンスを向上させるべき」とし、実際の効果について、位置情報データをIDベースで活用し、GoogleデータクリーンルームADHとDMP(Audience One)を使用した、注目の調査結果を示しました。

73532_10.pngそれによると、OOHは、単体のメディア効果だけでなく、Web広告の接触態度向上などの優れた間接効果(クロスメディア効果)が見込めるとのこと。実際、OOHで動画広告に接すると、その後、スマホで流れる動画広告もスキップされずに視聴される率が高まった(リフトアップ)のです。「公共の大型スクリーンで動画広告を見ると記憶に残るので、その記憶を頼りに接触態度が向上する(手元のスマホでも見る)のかもしれない」と三浦氏は分析します。

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また、店舗付近の交通広告に出稿すると、店舗来店率が増えるという結果も出ています。7回以上の接触で店舗送客に寄与することが見えたとのことです。三浦氏は「常時接続型のトリプルメディアプランニングを志向する時代が来ている」と、OOHで広がるメディアプランニングの可能性を語りました。

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■OOHトリプルメディアプランニングはベネフィットしかない!

さらに、3つのメディア(テレビ、WEB、OOH)に生活者が複合的に触れることで、流行っていると感じるようなシナジー効果、そして「世の中ゴト効果」があります。中里氏は「スマホで広告に当たって、テレビCMを見て、渋谷でOOHに触れる。3つも見ると"キテいる!"と思うはず。1+1+1が、4にも5にも6にもなる。OOHをスパイスとして入れるのが、『世の中ごと効果』かと思う」と説明しました。

また、中山は「街中で接するOOHは公共性が高いことも、ブーム感を醸成する一因ではないか」と指摘。中里氏は「それを広告主様側も、狙っている」と現場の実感を述べました。さらに、三浦氏は「生活者自らOOHの広告を撮影したり、その様子を見て周りも巻き込み拡散していく、といった独自の効果がある」と示唆。OOHが、ブーム感の醸成に大きく貢献していることが窺い知れました。

セッションでは、広告主のトリプルメディアの効果やメリットという観点でも意見が交わされました。櫻井氏は「OOHがデジタルデータと組み合わせることで効果の可視化が可能となり、プランニングする際の候補となる」とのこと。それを受けて三浦氏は、「結果、広告主様のトータルでのROIが向上する」と言及しました。メディアを提供する側である中里氏も、「今までOOHの効果が説明できなかったことが、ボトルネックになっていた」と語り、「今は効果を数値化できるので、さらなる普及を目指せたら」とOOHのさらなる展開に期待感を込めました。

今後は、トリプルメディアプランニングがスタンダード化し、OOHと他メディアとの連携効果を最大化することが重要になると考えられます。さらに、PDCAをより精度高く回すためにも、関係者が協力・協調して、さらなるデータ環境や指標の整備をしていくことが期待されるという統一見解が示され、本セッションは終了しました。

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【本記事で紹介したサービス】
1.サービス名:ビデオリサーチ「ACR/ex」
2.調査手法 回答専用タブレットを用いたインターネット調査
3.対象者抽出方法 ARS(エリア・ランダム・サンプリング)
※調査対象者の無作為抽出、インターネット非利用者も含む市場全体を母集団とする設計
4.調査地区 東京50�q圏
5.調査期間 2022年4月〜6月
6.調査対象者 上記調査地区に在住の男女12(中学生)−69才(7地区)。12才は中学生以上。
7.調査対象者数

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